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2014年08月17日

君が僕の息子について教えてくれたこと

昨日テレビでやってたヤツ。
今のところ再放送は予定されていないみたいだけど、反響が大きければやるんだろう。
君が僕の息子について教えてくれたこと - NHK

この番組に登場する東田直樹さんは、以前に「風になる−−自閉症の僕が生きていく風景」の感想を書いたことがあるし、時折購入するビッグイシューにも連載があって読んでいるから知っている。
私だけ知っていても仕方がないので説明しておくと、東田さんは重度の自閉症でありながら本を執筆されている。
で、当時13歳の東田さんが七年前に出版した「自閉症の僕が跳びはねる理由」っていう本が、
世界20カ国以上で翻訳され、ベストセラーになっている。
ってのが、この番組の中心になる話。

自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心



The Reason I Jump: One Boy's Voice from the Silence of Autism



で、この本を最初に翻訳した人は、アイルランド在住の作家デイヴィッド・ミッチェルさんってことで。

ミッチェルさんにも重度の自閉症の息子がいます。
息子が何を考えているのか分からず、どう愛せばいいのか途方に暮れていたミッチェルさんは、ずっと探していた答えをこの本の中に見つけました。
「『自閉症の僕が跳びはねる理由』を読んだ時に、ナオキの言葉を借りて息子が話しかけてくれるのを感じたのです。ナオキは私の感情を揺さぶります。泣かせられるのです。」
ミッチェルさんは、この本は多くの人を救うはずだと考え、すぐさま翻訳に取りかかりました。
そして世界20か国以上で出版される事になったのです。


<自閉症の息子を持つ母親>(海外)
この本を読んで息子の行動、気持ち、夢、すべてがわかったの。
この本はつらかったことも前向きにとらえさせてくれます。


<自閉症の息子を持つ母親>(日本)
理解したい、もっと寄り添いたいという思いがふくらみました。

<自閉症の息子を持つ父親>(海外)
この本のおかげで息子を愛し、受け入れ、より良い親になれました。
幸せをもたらしてくれたのです。

これは、日本の自閉症の若者と外国人作家の出会いから生まれた希望の物語です。


いやぁ・・・感動的ですねぇ・・・。
って言いたいところだけど、私は番組冒頭のこのあたりは頭の中は「?????」って感じだった。
え?自閉症の人って全員同じような精神構造なの?
全員同じことを考えて、同じことを要求して、同じことをしたいと思っている????
この本を読んで、どんなことが書いてあるのかを確認したいと思ったんだけど、残念ながら図書館の予約は数十人待ちで(放送後にそうとう数が延びたんだろうけど)当分読めそうにない。

で、場面は日本。
東田さんは自宅近くに執筆専用の仕事場を1か月前に構えたばかりです。
そういう目で見るべきじゃないんだろうけど「カネあるんだなぁ〜」と。
なかなか小奇麗でステキな仕事場でした。

自閉症を抱える人はアスペルガー症候群など、軽度のものを含めると100人に1人といわれています。
この部分ね。
ちょっと問題になっている。
「軽度」じゃないだろ!っていう反論の声が。
この番組は、アスペルガーなどを「軽度」と言っているシーンが、後からもう一回出てくるんだけど。
私としては「軽度」と呼んでいいのか悪いのかは、よくわからない。
ちなみに「軽度発達障害」ってのは「発達障害が軽い」って意味ではなく、「知能に障害を伴わない」って意味ですのでご注意を。
しかも「アスペルガー症候群」っていう名称は廃止になってんだけどね。
このあたりどうなんでしょうか?

日常会話はできない直樹さんですが、パソコンを使うと自分の考えを存分に表現できるのです。
会話ができないほど重度の自閉症を抱える人が高い表現力を持つのは、世界でも極めてまれな事です。


番組で「月に2度の雑誌の連載エッセー」と紹介されていたのは、先に紹介したビッグイシューのことと思われます。
名前出しちゃあイカンかったの?

直樹さんは、キーボードと同じ配列で並んだ母親手作りの文字盤を使うと他人と会話することが可能になります。
インタビュアー「何で直樹さんは文字盤を使えばコミュニケーションがとれるのですか?」
東田「自分の忘れてしまいそうになる言葉を思い出せるからです。終わり。」
伝えたい言葉の頭文字を常に目で確認しておく事で、頭に浮かんでいた言葉を記憶にとどめられるといいます。
東田「パソコンの変換のように次々と言葉が浮かんでくれるのです。終わり。」


文字を使うと会話がしやすいっていうのは、感覚的にわかる。
私の場合、相手の言葉も文字だとすごくいいんだけど。
聞き取るのは難しい。
普通に会話をしていて、自分で何を言っているんだか途中でわからなくなるんだよね。
その点、チャットみたいに文字だけでやり取りをすると、混乱せずに会話をすることができるんで、普通に対面で会話をするよりも私は「多弁」になる。
そのせいでチャットで先に接触した人に後から会うと「もっとマシンガンみたいによくしゃべる人かと思った」と言われる。

以下、「自閉症の僕が跳びはねる理由」より。

どうしてうまく会話できないのですか?
話したいことは話せず、関係のない言葉はどんどん勝手に口から出てしまうからです。
僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものです。

いつも同じことを尋ねるのはなぜですか?
今、言われたこともずっと前に聞いたことも、僕の頭の中の記憶としてはそんなに変わりません。
よく分かりませんがみんなの記憶は、たぶん線のように続いています。
けれども僕の記憶は点の集まりで、僕はいつもその点を拾い集めながら記憶をたどっているのです。


発達障害者が全員ってことではないんだけど、私も自分の体が思うようには動かせなくて、ものすごい違和感みたいなのをずっと感じていた。
自分の障害に気づかずに、周囲からの激しいバッシングを受けて、無理に無理を重ねて普通の人が普通にやれることはたいていできるようにはなったけど。
決して「普通にできる」ようになったわけじゃなく、今でも無理をして「普通であるかのように」やっているだけなんだけど。
そのあたりは理解されない。
「問題なくできているのだから、何の問題もない」みたいに片付けられるのがつらい。
記憶の仕方に関しては、私も普通の人と比べると「そのエピソードが前か後か」みたいな関連性が、かなり曖昧だったりするんで、普通の人はこうじゃないのかも知れない。

ミッチェルさん来日で、感動のご対面!
会見の場に向かう東田さんは、喜びのあまり唸りながら跳びはねまくり。
この人は、私が「風になる」を読んだ感じでは、非常に知的で豊かな人間性を持った人という感じだったけど、唸りながら跳びはねている人を目の前にしたら、通常は誰しもそんな内面を持っている人だとは思わないだろう。
むしろ「池沼かな?」みたいな感想を持つんじゃないかと。

会見の場に到着しても、すぐにはミッチェルさんの方を向かずに、15分間窓の外を見たりしている東田さん。
直樹さんはいつものように、外の景色に目を奪われてしまいます。
「目を奪われている」っていうのとは違うんじゃないかと思うんだけどね。
「儀式」っていうか、気持ちを落ち着けるために必要な手順っていうか。

ミッチェル「怖いものについて聞きたいと思っています。どんなものが怖いですか?」
東田「人の視線が怖いです。人はいつも刺すような視線で見ます。」


そうだねぇ。
跳びはねたりしてる人がいたら、見ちゃうよねぇ。
しかも、普通の人と同じかそれ以上にしっかり「感情がある」人だってのが外見からはわからないもんだから、余計に無思慮な視線を向けてしまうだろうねぇ。
これだけすごく「感情がある」と、相当つらいだろうけど。

ミッチェルさんは、もっとも聞きたかったことを切り出しました。
ミッチェル「お父さんとして、どうやって俺の息子を手伝うことができますか?どうすればいいですか?俺の自閉症の息子に」
東田「僕はそのままで十分だと思います。お子さんもお父さんのことが大好きで、そのままで十分だと思っているはずだからです。終わり。」


そりゃ、親として悩むよねぇ。
どうして欲しいの?とか聞いてもなかなか答えを引き出すこともできないだろうし。
何かもっとやった方がいいことがあるんじゃないか?とか、常に不安になるよねぇ。

(東田さん)
自閉症のお子さんに父親として何をしてあげればいいかと僕に質問されました。
僕はそのままで十分だとお答えしました。
子供が望んでいるのは、親の笑顔だからです。
僕のために誰も犠牲になっていないと子ども時代の僕に思わせてくれたのが、僕の家族のすごいところです。


なぜ、重度の自閉症である直樹さんがこれだけ豊かな表現力を持っているのか研究者も関心を寄せています。
精神科医の杉山登志郎医師登場。
杉山登志郎医は40年近く自閉症の研究に取り組んできました。
実際に直樹さんとコミュニケーションを取り診断します。
その結果、直樹さんは感情は豊かに発達しているものの、何らかの原因でそれが言葉に結びつかない、「言語失行」という状態ではないかと診断しました。
杉山医師は、その原因を探るために脳の状態を調べるMRI検査を行いたいと申し出ました。

で、杉山医師と東田さんがやり取りをして、最終的にはMRIを受けることを決定。
後日MRI検査が行われました。
脳神経の結び付きと、脳の部分ごとの体積を調べます。
密閉した空間に40分間閉じ込められるこの検査は、直樹さんには過酷なものです。
睡眠薬を服用して検査に臨みました。
検査結果から直樹さんの症状を解明する手がかりが得られました。
異常が見られたのは弓状束(きゅうじょうそく)という神経線維の集まりです。
弓状束は言葉を話す役目を担うブローカ野と、言語を理解するウェルニッケ野をつないでいます。
その伝達がうまく機能していない事が会話のできない原因と考えられます。
もう一つ分かったことがあります。
他人の意図を読み取る右脳の一部分の体積が健常者よりも大きかったのです。
直樹さんの豊かな表現力と結びついている可能性があります。
これは自閉症者は、脳のある部分が機能していない分だけ、それを補おうとほかの部分が発達する可能性があることを示していると杉山医師は考えています。
杉山医師「ハンディキャップがあるところには、その代償のための脳をうんと発達させた部分がある訳ですよね。で、我々は今までマイナスの部分に目を留める事が多かったんですね。でもそうじゃなくて、むしろこれだけ自閉症グループというか、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群など症状が軽いものを含めた自閉症の概念)が広がりがあるということが分かっている以上、この代償的に伸びているところはどこなんだろうという、それを注目をすることがこれからの療育の中心になると思います。その子の脳が喜ぶ事をやってやればいいんですね。それが一番、自閉症の子を伸ばしていく道になると思います。」


この後、番組は海外に住んでいる自閉症の人たちや、その家族の話を展開。
本によって救われたっていうことで。

アメリカの医療機関からの講演の依頼に応じて渡米をした東田さん。
講演はあらかじめ作成された文章を東田さんが日本語で読み上げ、それを英訳したものがスクリーンに映し出されるっていう形式で進行するのだが、東田さんの言葉がどうも読み上げるのに追いついていないというか、ちょっと説明がうまくできないんだけど「口が動く速度が、言おうとしている内容(文字数)に全く追いついていない」感じがした。

アイルランドの作家ミッチェルさんは、日本で直樹さんと会った際に、一つの約束をしていました。
自閉症についての本を一緒に書くことでした。
1年間メールを交わしながら、自閉症の直樹さんしか持ちえない感性を引き出し、自分と同じ立場にある人に、希望をもたらす本にするつもりです。
この日、ミッチェルさんは直樹さんに向けて、「人生の成功とは何だろう?」と問いかけました。
ミッチェル「私の成功は息子が障害を乗り越えられた時だ。とても誇り高く幸せな気分にしてくれる。例えば息子が『オレンジジュースをください』と言えた時だ。あるいは息子が靴箱に靴をきれいにそろえて入れられた時だ。私はそれを成功だと思う。誇りと喜びが波のように押し寄せるのを感じる。」
東田「成功からほど遠いように見える人の瞳にもきっと、美しい山が映っています。僕は、自分の言葉を世界中の人に届けられた幸運に感謝し、さらに高い山の頂上を目指すつもりです。」


ミッチェルさんが考える「成功」ってのは、健常者がやってるようなことができるようになることなのかねぇ?

東田「自由の女神を見たときに自分もこんなふうに空に向かってまっすぐに生きて行きたいと思いました。終わり。」

自閉症の君が教えてくれたこと。
それは、世界を見つめる曇りのない目でした。


はいはい。美しいお話でしたねぇ。
別に今回の内容がそんなに悪かったとは思っていないんだけど、「障害者は全員心が美しい」みたいに思っている人たち大喜び!って印象を受けた。

子供が障害者でも、親の側の状況っていろいろなんだよね。
特に発達障害は親自身も同じ障害を持っている可能性が大だったり。
重度の自閉症なんかだと、親がどんなに認めたくない!って思ったところでどうにもならんだろうけど、「自閉スペクトラム症」(今後はこう呼んでください!無意味だけど)なんかだと「障害なんてない!」って言い張ることも可能だからな。
実際、私だって「ガッツリ障害者」っていう結果を前に「それでも健常者として生活していきます」っていう選択肢はあったワケで。
間違いなく生まれつき障害者でしたってことが判明してもなお、障害者じゃないことにして生きることもできるっていうのもどうかって気はするんだけど。
日本の場合は特に「障害者として生きる」ってことに対してデメリットの部分がデカ過ぎるから、受け入れなくても済めば受け入れない方が得じゃん!ってことかな。

子供が自閉症で、東田さんの本を読んで改善をしようとして、っていうのはいいことだと思うけど、親の側に余裕がなくて、それが金銭的なことだったりすることもあるだろうし、夫婦仲がいいとは限らないどころか、障害児が生まれてきた時点で、それ自体が争いの元になりえるワケだし。
障害者に対するサポートだけじゃなく、障害者の親に対するサポートってのも必要だよねぇ。
頑張れ!って言うだけじゃなくてさ。


8月18日 追記

別記事を立てるほどでもないと思うので。
東田さん関連の文章がcakesにも掲載されていたのでリンクを貼っておきます。

「壊れたロボット」のような身体と対峙しながら――二十歳の自閉症作家・東田直樹インタビュー|跳びはねる思考――21歳の自閉症作家が見た世界|東田直樹|cakes(ケイクス)


自閉症者の困難も、家族の愛情も、国が違っても変わらない。――東田直樹特別インタビュー|跳びはねる思考――21歳の自閉症作家が見た世界|東田直樹|cakes(ケイクス)

posted by ひと at 13:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 発達障害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
‘「障害者は全員心が美しい」みたいに思っている人たち大喜び!’というのは、うがった見方と思います。

もちろんそういう薄っぺらい、安っぽい感想を抱いた視聴者はいたかもしれませんが、東田くんの存在が素晴らしいのは、彼のようにキーボードのような既存の道具とはいかないかもしれないけれど、その人に合う手段さえ見つけられれば、‘重度’の自閉症を持つ人の考えていることもわかるようになる、‘重度’の自閉症を持つ人ともコミュニケーションが可能になると、示してくれたところだと思います。

同じ自閉症スペクトラムといっても、やはり言語コミュニケーションが可能な場合(‘アスペルガー’、‘高機能’など)とそうでない場合を一緒くたには語れないと思います。コミュニケーションは自閉症(スペクトラム)を持つ人の周囲の人(家族など)だけでなく、‘重度’の自閉症を持つ人自身も望んでいるという、よく考えれば当たり前のことなのにいままで気付かない人の多かった事実を、東田くんが教えてくれたのだと思います。

【なお引用符(‘ ’)は、引用する場合だけでなく、用いることには問題があるかもしれない言葉をあえて用いる場合にも使う印ですので、‘重度’、‘アスペルガー’、‘高機能’といった用語についてはご了承頂けると幸いです…】
Posted by maggie at 2014年08月18日 13:50
コメントありがとうございます。

私は自分が「障害者」であると認識するようになるまで、多くの人が「障害者は心が美しい」みたいに考えているということは、思ってもみないことでした。
実際に障害者としていろいろな話を見聞きするようになると「びっくりするほど大勢の人が障害者に美しい心を求めている」と感じました。
統計を取ったわけではないですし、どの程度の割合かなどということは知りませんが、「事実とは異なったステレオタイプの見方」をされている少なくない人数の方が、この番組を見たら、やはり「大喜び」なのかな?というのが私の感想です。
もちろんあくまで私個人の感想ですから「自分はそうは思わない」というのは当然のことかとは思いますが。

発達障害者も定型発達者のように他人とのコミュニケーションを求めていると誤解されているようですが、少なくとも私はそういうことはないです(発達障害者にはそういうタイプもいます)。
この番組を見てmaggieさんは「コミュニケーションは自閉症(スペクトラム)を持つ人の周囲の人(家族など)だけでなく、‘重度’の自閉症を持つ人自身も望んでいる」と思われたようですが、あくまで「そういうタイプの人も中にはいる」ということです。

私は重度の自閉症者に関する知識がありませんが、もしかしたら東田さんとは全く異なる感覚を持っている人もいるかも知れないと思ったので、この番組を見て「重度の自閉症者に対してステレオタイプな見方が出来上がってしまうのではないか」という不安を覚えました。
Posted by ひと at 2014年08月18日 17:35
一つの事例から一般論化して考えてしまう可能性、その危険性については、私も同意です。
ただ自閉症というのは(私の知る限り)いままで一般的には、まさに‘自閉症’という呼び名にも表れているように、自分の世界に閉じこもった人たち、外界に無関心な人たち、というイメージの強い障がいだったわけなので、その偏見を覆すという意味で、東田くんの存在、その紹介には、とても重要な意味・役割があると思うのです。
Posted by maggie at 2014年08月19日 13:27
東田さんの事例は「最初のとっかかり」といった位置づけとしては非常に優良かと思います。
東田さんの文章は優れていますし、感情面が定型発達者には理解しやすい部分が多いかと思いますので。
単なるブームとして終わったりせずに、今後に繋がればいいなと思います。
Posted by ひと at 2014年08月19日 20:17
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