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2016年02月18日

2015年7月9〜17日◆『ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」』川村隆(後編)

これの続きです。

 最終的な調達額は三四九二億円。これで予定通り五社の子会社を完全子会社化し、次の成長へのスタートを切ることができました。(61頁)

彼がまずやったのが、日立は決断が遅いので「もっと決断を速くしようぜ」ということで

日常の部下とのミーティングなどは一五分もあれば充分です。(72頁)

 きちんと稼ごうという意識を持たなければならないのは、経営者だけではありません。一般社員もすべからくそうです。−中略−
 私は課長レベルが対象の研修では、「お金の匂いがするかどうかを見極めなさい」という話をしています。
「稼ぐ」よりも、もっと露骨な表現かもしれませんが、わかりやすく、意識しやすい言葉をあえて使っています。
(74頁)

世界シェアで一〜二位を争える分野なら、文句なしの勝てる事業です。三〜四位なら五〜六位と合併して狙うという方法を視野に入れます。五〜六位ぐらいになると、ちょっと怪しい。その事業はやがて遠ざける決断が必要になるかもしれません。(77〜78頁)

大胆かつ冷酷な経営方針だった。
川村氏の考え方は凡人には考えが及ばない、カリスマ性に満ちた経営者のものかと思いがちだが、よく読むと、彼の考え方は実にまっとうな正直な地味なものである。
一番会社が危険な時なので、一を足し続ける。
絶対に再建する時に、飛躍の掛け算とか、人員削減の割り算を使わない。
この日立のやり方は、ビルゲイツ、サムスンなんかとも違う。
やっぱり日立の社長さん。

 ただ、「鉄道車両を販売する」ように製品を売るだけでは、「世界で勝てる事業」とまではいかないかもしれません。(78頁)

日立はイギリスなんかでも鉄道車両を作って売る。
新幹線など。
いろいろ分業があるだろうからダン!とは言えないだろうが、鉄道車両に関しては日立がものすごい技術を持っている。

 たとえばシンガポールの交通局に、バスと電車の車両を売るだけではなく、ビッグデータを使って運転の組み合わせ方までアドバイスすることもできるでしょう。
「鉄道のどこかで事故が起きた時には、バスでバックアップするのがいいですよ。コンピュータを使えば、迅速に振り替え輸送ができます」
 このような提案までができれば喜ばれます。
(79頁)

メイドイン日立は、商品以外のそういう付加価値まで展開して、相手の要望に応える。
「それが俺たちメイドイン日立のプライドなんだ」っていう。
このあたりがすごい。

 二〇一二年、日立は薄型テレビの自社生産から撤退すると決断しました。
 昔はキドカラ―という名前のブラウン管テレビで一世を風靡し、プラズマテレビに進出してからは、日立のコア事業の一つになっていました。
−中略−
 当時は薄型テレビの市場ではプラズマテレビの市場ではプラズマテレビと液晶テレビの主導権争いが続き、大型テレビはプラズマのほうが技術的に優れていると言われていました。ところが、液晶テレビが大型化に成功すると、プラズマテレビは高精細であるけれども消費電力が大きいところがネックとなり、最終的には液晶テレビに軍配が上がったのです。
−中略−
 それはやはり、現場から激しい抵抗があったからです。
(109〜110頁)

攻めると引くというのが難しいのだろう。

その後も先の先を読む。
(ここからフィリピンとインドネシアの道路建設の話になるのだが、本の中ではあくまで「たとえ話」のようで、ちょっと話がズレている。102〜103頁あたり)

「情」より「理」をとれ(132頁)

相手を納得させるところまで言葉を取れ。
理屈にちゃんと芯を持て。

日立の電力事業は創業事業。
日立はモーターで最初、会社を興した。

東日本大震災後、電力事業を取り巻く環境は大きく変わりました。電力会社もコストを強く意識するようになったので、今までのような条件で受注するのは難しい状況です。電力会社が海外の割安のメーカーに発注するようになる可能性もあります。(133頁)

ならば、中・韓・米に負けない値段を提案できるメーカーに日立もなるべしと主張。
そういう会社になるべく、ライバルである三菱重工と手を組んだ。
それで火力発電事を立ち上げた。
「日立三菱重工」
(調べてみたが社名は「三菱日立パワーシステムズ株式会社」)
これはものすごく社長としては悩むだろうが、合弁で会社をやるということで、日立の工場を三菱に明け渡す。

火力発電事業を三菱重工と合弁企業を立ち上げてやっていくと決めたときも、OBから「何たることが」と非難が集中しました。−中略−非難するOBには「海外に生産を任せているテレビ事業とは違い、三菱重工と手を組んで世界で戦える事業となって生き残ることをめざすのですから、日立の火力の歴史が途絶えるわけではないんです」と伝えました。(133〜134頁)

(番組では「このままでは火力発電技術が消える可能性がある」と説得したと言っているが、本の内容とは趣が異なる)

 日本人はチェック(C)と改善(A)は得意ですが、プラン(P)と実行(D)は弱い気がします。(136頁)

これはハッとする一言。
何でこれを思ったかというと、舞台の時の五月の大阪。
橋本市長が何をやったかというのを地元のテレビがしきりに言う。
橋本徹という市長さんのすばらしさは、チェックと改善が抜群。
市の予算をチェックする。
そして厳しく市の職員を改善していく。
その後、プランと実行がある意味でなかったのではないか?
プランと実行のむずかしさ。
チェックと改善。
あそこが悪い、ここが悪い。
ここはこうすればいいんだ。
ここはこう改善しよう。
これは日本人は得意だが、どうプラン立てて、どう実行していくかに関しては・・・。
プランと実行ということに関して最近見つけた本の中で、アッ!と驚いたのが『福井モデル』。

福井モデル 未来は地方から始まる



街を作っていくので最もうまくいっているの県はどこかと日本で探していくと、東京でも大阪でもない。
富山、石川、福井。
これが何故かというのがピッタリの本がある。
ここはプランと実行がうまくいっている。
「こういうプランでこう実行すれば」という。
チェックと改善だけではダメなんだ。

「人がもっとも成長するのはどんなときですか」
 そう尋ねられたら、私は「しんどい思いをしたとき」と答えます。
−中略−
 そういった「修羅場体験」が何より人を成長させるのだと、泥臭いかもしれませんが、私は実感しています。
(138頁)

ある能力を身に付けたらぞんぶんにミッションを与えて、難度の高い仕事に向かわないと人間は成長しない。
「しんどい仕事」というのを体験して、人変わりした社員を川村会長は何人も見た。

「二度と新興国には行きたくない」と思う社員もいるかもしれませんが、「インドの貧しい地域の人々の生活を救いたい」と自分なりのミッションを見つける社員もいるかもしれません
そういう想いがビジネスのアイディアに結びつくこともあるでしょう。
 しんどい体験は、人のさまざまな能力を覚醒させるきっかけにもなるのです。
(146頁)

修羅場というのが人間を成長させる。
「売上を伸ばせ」
それだけでは人間は絶対に成長しない。

芸能をやっているとわかるが、突破したり一皮むけた人はヒラキの仕事をしている。
できる仕事をできるようにやったというような、そんなことではその人は伸びない。

川村元会長曰く、失敗したら必ず始末書を丁寧に書かせる。
この小さな反省の繰り返しが、辛抱強さを身に着けさせる。
小さな失敗を恐れないものは、大きな失敗をしない。

 私流のリスクヘッジの仕方の一つが、「早く、小さく失敗する」という方法です。(158頁)

小さい失敗でガタガタ文句ばっかり言うところは、大事故に結びつく。

「山より大きいイノシシは出ない」と言われるように、物事にはおのずと決まっている上限が存在するものです。心配すればするほど不安が大きくなりますが、心の持ちようで小さくすることもできるのです。
 そして、逃げずに立ち向かうと、意外と問題は小さかったと気づく場合もあります。あれこれ考えすぎるより、行動に移してみるのが一番の解決策なのです。
(157〜158頁)

一〇〇点満点をめざすのは悪いことではありませんが、実社会では一〇〇点が必要ではないことも多いのです。−中略−
「五一点でいい」という心構えが、多くの場面で自分を助けてくれるはずです。
(160頁)

(番組では「51点でいい」というのは自分で自分に対する評価という話になっているが、本の中では部下などに対してのことのようだ)

 ある部下は、海外の商談で金額の提示を迫られたときに、その場で「七〇〇〇万ドル」と言えばローターの注文が取れたところを、「東京へ持ち帰ります」と言ったがために失注したこともありました。結局競合していた他者が七二〇〇万ドルで受注したので、約七二億円の失注でした。
 このときは「なんで金額をその場で言わなかったんだ!」と、かなりキツく叱ったことを覚えています。
−中略−
 しかし、この件に関しては、実は私のほうに落ち度がありました。
 後からよく考えてみると、部下を商談に行かせる前に、「七〇〇〇万ドルまでの権限をお前に与える」と伝えていなかったことに気付いたのです。
(165〜166頁)

「彼に責任を負わせず、余計なものを背負わさず、身軽にしてやっていればあの仕事は撮れたんだ」、そう彼は後悔した。

 トラックも、空荷なら楽々カーブを曲がれますが、重い荷物を積みすぎて過積載の状態になれば、簡単なカーブも曲がりきれなくなってしまいます。ラストマンも、余計なものは背負いすぎず、いつでも身軽でいるべきなのです。(170頁)

(番組の中では、トラックの例は叱られた部下に関して言っているようだが、本の中ではラストマンに関して言っているようだ)

夢の扉+|TBSテレビ
自分が賭けた起業や発明に一生懸命打ち込んで、世の中をちょっとでも明るくしようとする人たちの活動ぶりを描いた番組。
時々感動することがある。
タイの洪水を見ていて、タイの人たちに沈まない車を作ってあげよう。
2015年6月7日:過去の放送|TBSテレビ:夢の扉+この放送かと思われる)
あそこの洪水はだんだん川から溢れて水浸しになる。
自動車の電気系統は全部ダメになる。
浮く自動車。
ゆっくりだけど進むこともできる。
そういう自動車の発明をした人のことをやっていた。

『福井モデル』
富山、石川へ奥様と遊びに行ったことがある武田先生。
情景が見えてくる。
富山はハッとするぐらいキレイ。
『福井モデル』の最初の章が富山。
市の財政が圧迫する。
その時に、富山はコンパクトシティといって整備された町区画というのを『団子3兄弟』みたいに、串は鉄道でむやみに広げない。
コンパクトにまとめていく。
人間の心理の面白さ。
富山の市長さんは路面電車をいっぱい工夫する。
どこから乗っても、街の中心部まで入ってくると100円。
でも、中心部の手前で降りたりすると距離分払ってください。
みんな必ず街の中心部に集まるように。
そうすると、そこの地価が値下がりしない。
商店がそこに進出してくるので、そこだけ税収の高い店がぎっしりコンパクトに生まれてゆく。
こういうのがムードに流されやすい政治とか会社の経営なんかを非常にわかりやすいものにしてくれる。

『ザ・ラストマン』の本の中にもそういう話が出てくる。
著者、川村氏は、日立のV字回復を成し遂げると2014年、五年間で過去最高益を出したところで会長職に身を引く。
(実際には会長兼務で社長は一年間。その後は会長のみ。五年間で「黒字化の目処を立てた」)
ラストマンこそラストが大事。
彼の組織論というのは「機能体、活き活きと生き物として企業は動いていなければならないのだ」という。

日立パワーアフリカ(現・三菱日立パワーシステムズアフリカ)という会社があります。−中略−
 電力事業を手掛けていて、発電所のボイラーの設計や据え付け、試運転を行うほか、ボイラーの据え付け関係部品も現地で製造しています。アフリカで雇用を生み出すのに貢献しているのです。
 ここでは、面白い取り組みをしています。そこで働いている社員達がお金を出し合って基金をつくり、その地域の住民たちにお金を貸しているのです。お金を借りた人の中には、発電所の社員などに弁当を販売する仕事を立ち上げた人もいます。
(228頁)

(番組の中では「弁当を売るおばさんの笑顔がよくて」というような話をしているが、そういうことは、この本の中には出て来ない)

自分たちの稼いだ利益を、地域に還元する。企業はそういう存在であるべきなのだと、この取り組みを通して改めて認識させられました。(228〜229頁)

アフリカのおばさんにも仕事を増やしていく。
そういう中に日立っていう企業の名があることが大事なんだ。
現地の人へいくらお金が落ちるか。
中国と韓国に関して、日本の企業は失敗している。
韓国にも子会社を作って、昔下請けばっかりが韓国にあった。
感謝の言葉って一言ももらっていない。
中国でも同じことを展開したが、中国からも決して感謝されなかった。
安く使われたという怒りみたいなものを、今日本はぶつけられている。
一緒に栄えていこうというような想いがないと、事業というのは「安く使って」というのではうまくいかない。
そういう意味で中国と韓国でうまくいかなかったところを、東南アジアとか中東とかアフリカでは絶対に繰り返してはいけない。
日本という国はそういう意味で、働く人に報いる国であって欲しい。

組織とは共同体と機能体がある。
企業の本質は利益のための機能体なのだ。
そのためには共同体のチームワーク、結束力が必要なのだ。
そのチームワークは、下が上の顔色をうかがうような関係にしてはならない。
生き物のように活動するという、そんな企業に。

 内閣府が報告した「平成26年度版 子ども・若者白書」によると、日本の若者は諸外国と比べて自己を肯定的にとらえている者の割合が低く、自分の将来に明るい希望を持っていないことがわかりました。
「自分の将来について明るい希望を持っているか」との問いに、「希望がある」「どちらかというと希望がある」と答えた日本の若者は六一・六%。アメリカやスウェーデンは九〇%を超え、お隣の韓国でも八〇%を超えているのに、日本は最下位です。
 そして、「四〇歳になったときに幸せになっている」と答えた割合は六六・二%。他の国はすべて八〇%を超えているなか、やはり最下位です。
(217〜218頁)

 それでも私は、日本の未来について楽観的にとらえています。
−中略−そして、東日本大震災のときに世界が驚嘆したモラルの高さと、団結力。(218頁)

日本の滅茶苦茶強い技術への憧れ、日本人って本当に技術が好き。
これらの可能性が日本の資源であり、日本の強みなんだ。
世界で熾烈な価格競争に破れ、日本は家電やスマートフォンで中韓に圧倒され、今も破れ続けている。
しかし、皆さんも薄々お気づきだろうが、アジアでゆっくり品質重視の傾向が出始めた。
中国資本のラオックス。
日本にあるラオックスの店が「メイドインジャパン」を第一看板に上げ始めた。
台湾や中国の今、世界で一番買い物に熱心な人たちが「メイドインジャパン」というのは品質、メンテナンス、信頼性、付加価値について日本は非常に優れたものを持っているということで、安さで負け続けたが、その他のものではゆっくり勝ち始めた。

日本は納期を守る、時間を守るといった精神面でもすぐれていますし(219頁)

海外進出が進んでも、本社や研究所、マザー工場は日本におくべきだと私は考えています。(219頁)

川村氏は日立の社長室を出る時、社員にメッセージを贈る。

 Remember, the best is yet to come !
「覚えておきなさい、最良のときはこれから来ることを」という意味です。
(222頁)

もはや利益のみ追及の大企業時代は成立しない。
大企業は社会問題、環境等ソーシャルビジネスの貢献は絶対に必須なのである。
そういうことを忘れてはいけない。
どこか企業体として回転しながら、人々を励ます、暮らしを励ます、働く人の幸せに貢献する、そういうことに貢献しないかぎり、これからの大企業はやっていけない。
日本型資本家というのは、欧米の資本家と本質的に違うような気がする。
ビル・ゲイツという人も意外といい人なのかも知れない。
あの人は日本が好きで軽井沢に隠し別荘を持っている。
ジョブズに驚いた武田先生。
禅宗が好きで禅宗の本を読んでいた。
若いワリに悪性のガンでお気の毒だったが、その人の精神の真ん中に日本の「禅」があったという。

(ここから『弓と禅』という本の話になる。この回よりも後にこの本が主題のものが放送されたが、順不同になっているので当ブログでは既に紹介済みなので割愛)

弓と禅




武道とは運を強くするためにやる修行だ。


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