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2017年05月05日

2017年1月9〜20日◆ニワトリI(前編)

ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥



案外この世界を回しているのはニワトリかも知れない。
人類をニワトリが操っているのではないか?
これを読み始めるとニワトリの世界に吸い込まれていく。

世界で最も広範囲にその個体数の多さを誇っている生き物、それは一体何だ?
人口が一番多い生き物は地球上で何だ?
一番身近なところでは猫、犬、豚、牛等々いるが、とにかく人類よりも多く生きている「温血脊椎動物」は実はニワトリ。

この地球上には、常時二〇〇億羽以上のニワトリが生息している。(6頁)

 世界中で一カ国と一大陸だけ、ニワトリのいない場所がある。ローマ教皇フランシスコ一世の食卓に定期的に並ぶ皮なし胸肉がローマの市場で購入されているのは、小さなヴァチカン市国には鶏小屋を置くスペースがないからだ。そして、南極大陸ではニワトリはタブーとされている。南極のアムンゼン・スコット基地の新年会では鶏手羽のグリルが定番料理なのだが、南極大陸に関する国際条約により、ペンギンを病気から守るため、生きたニワトリも生の鶏肉も輸入を禁じられているのだ。(6頁)

去年から今年にかけてもまた話題になっている「鳥インフルエンザ」。
考えてみれば、あの鳥インフルエンザもニワトリの問題。

アメリカのNASAは火星旅行の準備に入っていて、ここでの最大の目的はなんと、宇宙船の中でニワトリが飼えるかどうか。
NASAは真面目にやっているみたいで、今、実験が続いているそうだ。
ニワトリの場合は「旅の最中の食糧になりうる」或いは「卵をある程度の無重力状態で産めるか」とかっていう、研究課題があるのだろう。
ニワトリというのは世界中の遺跡を見ると必ず骨が出てくる。
ということは相当の昔から人間が旅すると同時に持ち歩いた形跡があるという。
四千年以前のことだが、アラビアの海岸でインドの商人が交易の為、アフガンから材木を仕入れていたという、その材木の遺跡が見つかった。
何と驚くなかれ。
その材木の遺跡の中から、時代的に言えばピラミッドがもうちょっとでできるっていう時代に、アラビアの海岸でニワトリの骨が発見され「喰ってたんだ」というので、これがおそらく人類が最初に食べたフライドチキンじゃないかというので大騒ぎになった。
よく調べてみたら何のことはない。
発掘スタッフが昼休みに食べたケンタッキー・フライドチキンだったというので、大発見は反故にされたという。
こういう、わりとシャアシャアとしたジョークも書いてあるのだが、人類と共に歩いたニワトリの足取りは消えやすくて非常に探りにくい。
しかし、この著者アンドリュー・ロウラーさんが言ってらっしゃることは、どこかヒタヒタと「ニワトリがいかに偉大か」っていうことが伝わってくる。

 もしイヌ科とネコ科に属するすべての動物が明日消滅してしまい、わずかばかりのインコとスナネズミも一緒に消え失せてしまったら、大勢の人々が嘆き悲しむことになるだろうが、世界経済や国際政治に及ぼす影響は最小限で済む。しかしながら、世界から突然ニワトリが消えたなら、即座に大惨事になるだろう。二〇一二年、メキシコ・シティで何百万羽ものニワトリが病気で殺処分されたために卵の価格が急騰すると、デモ隊が街頭に繰り出し、新政府は混迷に陥った。(9頁)

そんなふうにして、実は世界の大きな政治的転換というのは意外とニワトリがキーを持っている。

近ごろイランで鶏肉の価格が三倍になったときには、警察のトップからテレビのプロデューサーへ、鶏肉を食べる人の映像を放送しないようにという警告があった。焼いたケバブを買えない人々の暴力行為を誘発するのを避けるためだ。(9頁)

かくのごとく、世界あるいは政治、そういうものとニワトリは深く結びついている。
ところがニワトリの恐ろしさ。
牛肉はTPPで大問題になる。
ブタも大騒ぎになる。
ブタの場合は宗教が絡んでくるので「あ、豚肉食わせたな」というもので、とある宗教を信じてらっしゃる方からは目のカタキにされる。
ところが脇役に追いやられているニワトリは全然牛、ブタに比べて騒ぎにはならないのだが、実はこれほど身近なものはない。
牛肉を扱っていない、豚肉を扱っていないという店はコンビニにある。
でも日本中のコンビニでタマゴサンドを置いていないところはない。
ゆで卵を売っていないコンビニはない。
ファミチキをレジの横で並べていないコンビニもない。

私達の暮らしの中に深く入り込んだニワトリという生き物。
私共はその茶色に焼かれた太ももとか手羽とか卵とか、そういうものには毎日接するのだが、ニワトリそのものはなかなか見かけることができないという。
よく考えると不思議な生き物。
何と今、全地球で200億いる。
中国の方が13億(人)。
もうニワトリに比べれば、ニワトリは笑う。
「えー?少ないんじゃないの?」とか言っているのかも知れない。
とにかくニワトリほど繁殖し、数を増やしているのは地球上であのニワトリしかいないワケだから、酉年の今年、彼らを追跡してみようというふうに思う武田先生。
「コンビニで鶏のから揚げ、タマゴサンド、ゆで卵を売っていないところは一軒もない」と断言した武田先生。
確かにその通りで、いかな商店街でも焼き鳥というのはある。

それではそのニワトリはどこから来たのか。
今のニワトリというのは、ある意味ではもう工業製品。
養鶏用のためのニワトリというのは各地のニワトリが様々混じるのだが、スタートは一種類。
だから故郷がある。
ニワトリも大昔は野生で生きていた。
間違いない。
ワイルドでこいつも生きていた。
上手に飛べない鳥として、おそらく密林の中なんかで生きていたのだろう。
空を飛ぶのはアレだが、枝から枝へ移って行く位の飛翔力、飛行力の方が生存には適しているということで。
狩りなんかを一緒にやるためにオオカミの一派が人間に接近して「飯喰わせてくれるんだったら一緒にオマエと生きていこうぜ」ってオオカミの方から申し出て、それが犬になった。
で、人間が農業をやるようになった。
穀物を倉庫に置く。
「ネズミが出てまいったな」ということでネズミを喜んで喰ってくれる森の生き物で山猫がいるというので基本的な飯は持つことにして「時々ネズミ駆除してくれよ」というので猫と同居し始めた。
ではニワトリはどうやって人間に接近してきたのか。
考えたら不思議。
まずはちょっと周りの動物を見る。

二五〇〇〇種いる魚類の中で、飼い慣らされたとみなすことができるのはキンギョとコイだけだ。五〇〇〇種以上の哺乳類のうち二、三〇種が家畜化され、一万種近くいる鳥類の中でも、家の中や農家の庭でくつろいでいるのはわずか一〇種程度だ。(17頁)

(番組では金魚も鯉も飼い慣らしたのが日本人と言ってるが、調べてみた限りでは鯉は日本のようだが金魚は中国)
その中で人間の側にいて離れずに、懐きはしないのだが、卵をプレゼントすることによって人間と一緒に暮らせる。
人間もニワトリがありがたかった。
何でか?
人間にとってもこのニワトリが有難かったのは、穀物に手を出さなかった。
ある程度の穀物を分け与えておくと、それ以上は求めない。
後はそこらへんの雑草を喰ったり虫を喰ったりなんかしながら卵を産んでくれるという
そういうことで人間は彼らをパートナーに選んだのではないだろうか。
ニワトリにとっても森の中でトカゲ、蛇から襲われて卵や雌鶏そのものも喰われるよりは、人間と一緒にいて卵だけっていうのが「セーフ」という感じがしたのだろう。

ニワトリの故郷は出身地を縮めて言うとインドシナ半島の密林。
ここに赤色野鶏(セキショクヤケイ)なる飛べない鳥がいる。
どうもこれがニワトリの原種らしい。
ニワトリというのは考えてみると恐竜の末裔。
足の爪とか骨格は恐竜。
恐竜がちっちゃくなったのがニワトリ。
警戒心が強くて、闘争本能がすごくある。
この原種には優れた可塑性がある。
つまり掛け合わせによって様々な特徴を生み出す。
だからある原種と組み合わせると尾っぽだけ伸びるっていう鶏もいる。

日本のニワトリのある品種では尾が二〇フィート(約六一〇センチ)にも及ぶ。(22頁)

オナガドリ。
こういう可塑性があるという。

ニワトリに関して、私共は毎日食品として接しているワケだが、その実態についてはあまり知らなかった。
御存じの如く、ニワトリはオスがトサカとか頬、それからアゴ等々に肉冠というタブタブを持ち、オスの方はものすごく派手。
メスの方はというとただひたすら茶色で、あまりたいして飾りを持っていない。
これは地面で卵を温めるためで、襲われないためにメスは地味に、オスはただメスのお気に召すように命をかけて派手な衣装を着て、襲われる時は率先して自分が襲われているという、そういう宿命を背負っている。

ニワトリというのは目の、色を感じる細胞が人間より多い。
色鮮やかにカラーの世界が人間より見える。
だから私共が雄鶏を見るよりも、雌鶏になって雄鶏を見ると本当に「リオのカーニバル、フルライト」みたいな「ビバ!」みたいな。
それで世界が華やかに見えているらしい。

ニワトリと言えば「コケコッコー」。
時の声「夜が明ける」ということは、体内時計がしっかりある。
だから曇ってもその時刻になると大声で時を告げるという。
それから夜になると目がカタンと落ちるという「鳥目」。
あれは、つまり昔からニワトリは昼間活動して夜は寝ていたということ。

ニワトリはインドシナ半島のジャングル、密林に生まれて、セキショクヤケイはどのような旅をして世界に広がっていったのか。
1923年、エジプトでイギリスの歴史家、ハワード・カーターさんはツタンカーメン王の墓を発見する。
(この表現だと1923年に墓が発見されたように思ってしまうが墓の発見は1922年で、1923年に古代エジプトでニワトリが珍しい高貴な鳥だったということが明らかになった)

その四カ月後に彼は、近くにあるラムセス九世とアクエンアテンの墓の間で、割れた陶器のかけらを見つけたと報告した。(46頁)

その陶器の模様が何とニワトリだったという。
これはセキショクヤケイ。
これが紀元前1300年のことなので、おそらくインドシナ半島からも、もうやっぱり紀元前二千年の頃までエジプトまで行っていたのだろう。
どうも絵にあるニワトリを見ると卵目当てではなかったようだ。
ニワトリは家畜ではかった。
では、ニワトリは何のためにエジプトにやってきて、何に利用されていたのか?
一番最初のスタートはマダニや蚊を食べてくれる害虫対策のための鳥だった。
それとピラミッドとか建てなきゃいけないので「朝は定時で仕事開始したい」ということで時計として重宝されたようだ。
それで時計として作業の開始を「コケコッコー」で叫ぶものだから、だんだん宗教の方に入ってきて「朝を知らせる鳥」という。
この朝を知らせる鳥から「希望の朝を象徴している」という。
それから古代アッシリアの首都では納骨堂の副葬品に象牙と金で作られた箱があり、その箱に刻まれたのが何とニワトリ。
ヒンドゥーの世界からニワトリはゾロアスター教、ユダヤ教、キリスト教へと渡り歩く。
イスラムの宗教の中にもニワトリは登場する。

イエスが磔刑に処せられる日にペトロに予告したことを思い出させるためのものだとされている。雄鶏が二度鳴く前にペトロは師のことを知らないと三度言うだろいうという予告だ。(210頁)

だからイエスの時代にもイエスの足元にニワトリがいたということ。
パレスチナにたくさんニワトリがいたという。

預言者ムハンマドは、ペルシャ帝国の繁栄から一〇〇〇年後に信徒に次のように語っている。「雄鶏の鳴き声が聞こえたら、天使が見えたということだから、アッラーに頼み事をすると良い」。(69頁)

インドシナ半島から世界へ旅立ったニワトリだが、まずはエジプト方面からパレスチナの方に潜り込んだニワトリは様々な世界宗教の1ページの中にも潜り込んで生きていく。
最初は卵でもなければ肉でもない、朝を告げる鳥ということで時計代わりに非常に便利に使われたということだ。
時計代わりに使われるうちに宗教のシンボルとしてこれらの文明に住みつく。
ニワトリは目覚めと勇気と復活を象徴した。
現在一部の国では激しく対立するキリスト教とイスラム教だが、その両方の宗教の中で鶏は生きている。
ニワトリは恐るべき生き物。

ある学者の意見では、ニワトリの形そのものが古代人にオイルランプ──古代世界において一般的な人工の光源──を思い起こさせたのだろうという。ランプの口は突き出したくちばしに似ているし、ランプの取っ手はぴんと立てた尾羽のようだ。(70頁)

つまりイスラム世界ではニワトリというのは光と結び付けられた神の使いという扱いだった。
かくのごとく最初は肉や卵ではなくて、時告げ鳥として良き訪れを知らせる鳥という縁起の良い鳥ということで世界にもてはやされたようだ。
因みに新年の挨拶で短く春を寿ぐ時に「慶春」を使う。
「慶」というのは「良い知らせがやって来るぞ」という意味。
「鶏」の中国読み、ニワトリの肉のことを何と言うか?
鶏肉(ケイニク)。
つまり中国人がなぜあの「鶏」という字を「ケイ」と読ませたかというと「良き報せを持ってくる」というので「慶」と同じ音にしたと言われている。

天照大神が洞窟に隠れてしまったとき、誘い出すことのできる動物はニワトリだけだったのだ。(71頁)

かくのごとくニワトリというのはあらゆる世界中の神話の中に潜り込んでいる。
このあたり「卵欲しさに飼われた」とか「鶏肉が欲しいから」とかっていうんじゃなくて、最初は時告げ鳥「太陽を呼び出す」という霊力がニワトリにはあるのではないかと、宗教の中に住みついたのがニワトリ。

今から何千年も前、ニワトリは西洋方面、西ばかりではなく、東へも旅を開始する。
太平洋を渡ることになる。
アジアを横断しオーストラリア、それから三万年前にはニューギニア・ソロモン諸島へ行ったという。
海に阻まれたりするが、ベーリング海峡を渡る一派に混じってカゴに入れられてきっと持ち歩かれたのだろう。
新大陸へと渡って行った。
これが大体、今出ている遺跡から推測できるが、一万三千年前は南米の最南端までニワトリは行ったようだ。
それからあっと驚くなかれ、イースター島にニワトリの骨があったというから、太平洋を渡る旅人達は丸木舟で、その人たちもニワトリだけは小脇に挟んで旅をしたのだろう。

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