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2018年06月01日

2017年11月13〜24日◆世界からバナナが無くなる前に(前編)

世界からバナナがなくなるまえに: 食糧危機に立ち向かう科学者たち



「今、現代の文明というのはこういうことが起こりうるぞ」という警告の書。
バナナ。
ありふれた果物だが、これが突然、世界の食卓から消えるという危険性が今、あるという。

 一万三〇〇〇年前、私たちの祖先は皆、一週間のうちに数百種の植物や動物を消費していた。(7頁)

しかし、わずか三千年ほど前にその種類が減った。
なぜ減ったか?

 農業が拡大するにつれ、消費される食物の多様性は世界全体を通じて低下していった。(7頁)

人類が消費しているカロリーの八〇パーセントは一二種、九〇パーセントは一五種の植物から得られているに過ぎない。−中略−現在では野生の草原よりトウモロコシ畑のほうが、総面積が広い。(7〜8頁)

たとえばコンゴ盆地に住む人々は、カロリーの八〇パーセントをたった一種類の作物キャッサバ(ユカあるいはマニオクとも呼ばれる)から得ている。中国には、コメが消費カロリーのほとんどを占める地域が存在する。(8頁)

我々日本もそう。

北米では、平均的な子どもの身体を構成する炭素の半分以上は、コーンシロップ、コーンフレーク、コーンブレッドなどのトウモロコシ製品に由来する。(8頁)

その他に小麦、ジャガイモ。
これがほとんど全人類を養っているという。
家畜の飼料もそうなので、人類は実に今、非常に画一的に偏った食事をしている。

1950年代、こんな歌があった。

バナナ・ボート



全世界で大ヒットしたというハリー・ベラフォンテ。
「積んでも積んでもバナナの出荷が忙しくておうちに帰れない」という意味(の歌詞)。
「バナナの出荷が忙しくて、おうちに帰りたい。早くおうちにバナナを積み終えて帰りたい」と。
「アイウォナ何とかゴーホーム」だから「早くおうちに帰りたい」。
(歌詞を確認してみたが、この箇所は多分「me wan' go home」)
これは1950年代にヒットしたポップス。
これはどこの情景かというとグアテマラだそうだ。
(調べてみたがグアテマラではなくジャマイカのようだ)

 一九五〇年には、ほとんどのバナナは中米から輸出されていた。とりわけグアテマラはバナナの主要生産国で、アメリカのユナイテッド・フルーツ社が運営する巨大なバナナ帝国の核をなしていた。(9頁)

ユナイテッド・フルーツ社の収益はばく大で、一九五〇年には、グアテマラ国内総生産の二倍に達した。(10頁)

 やがて起きるべきことが起きる。パナマ病菌
と呼ばれる病原体によって引き起こされる病気、パナマ病が到来したのである。パナマ病は、一九八〇年にバナナプランテーションを破壊し始めた。
−中略−ホンジュラスのウルア谷だけで、パナマ病が到来したその年に、三万エーカーが感染し放棄された。またグアテマラではほぼすべてのバナナプランテーションが壊滅し放棄された。(13頁)

3万エーカーは東京ドーム2千4百倍。
(計算してみたが3万エーカーは121944000m2。東京ドームを単位として使う場合46755m2。よって2608.148861084376となり「東京ドーム2千6百倍」となる)
それでグアテマラが数か月後にバナナの名産地、バナナボートの国ではなくなってしまった。
その不幸により他の国のバナナが売れ始めた。
それがコスタリカ、エクアドル。
ここで別の種類のバナナが息を吹き返し、グアテマラのバナナ帝国は消え失せたという。
グアテマラは今、コーヒーで生きている。
昔はバナナな。
このコーヒーも考えてみると危ない。
何でかと言うと、挿し木でどんどん増やされていくので同じものだから。
だから多様性がいかに大事かがわかる。
いろんな種類というのが。
農業の画一化は単位面積あたりの収穫量を夢のように増大させた。
しかし滅びる時は数ヵ月で全滅するという危機。

前に取り上げたこともある「ジャガイモ飢饉」。
『ニワトリ』という本の時の件かと思われる)

一八四五年の春には、カナダのニューファンドランドに達し、その年の後半にはベルギーに上陸していた。ひとたびベルギーでジャガイモ疫病が発生すると、拡大の速度が上がり、その進行は、年単位ではなく月単位で、さらに週単位で測られるようになる。かくしてジャガイモ疫病は、七月にはフランスに、八月にはイングランドに達した。(22〜23頁)

一〇月には、ジャガイモ疫病がまだ到来していない畑は、アイルランドには存在しなかった。それから三か月以内に、一〇〇万エーカーのジャガイモ畑の四分の三以上が壊滅し、あとには悪臭を放つ黒い腐敗物が残されていた。
 畑のそばを通った人は、悪臭について語った。
−中略−感染したジャガイモの塊茎や茎が、硫黄臭を放っていた。地面から地獄のにおいが漂ってくると言う者もいた。(30〜31頁)

悲惨なのはアイルランド。
ジャガイモという穀物を奪われたアイルランドの農民は草や木を食べてその年、しのいだ。

 一八四六年の夏、不安は恐怖に変わる。雨は降り続き、それにつれ前年以上にジャガイモ疫病が拡大する。そしてジャガイモは失われた。(32頁)

ついに本格的な飢餓が始まり、死体を埋めるがもう穴に入りきれず溢れるという。
(本にはそうは書いていない)

 一八四七年八月の夏、銃を所持する者は、残った動物を狩りに出かけた。九月に入ると、銃と残った弾は、地主を脅して持ち物を奪うために使われるようになる。十月には、銃弾が尽きる。一一月には千人単位で人が死に、一二月にはそれが万単位、さらには一〇万単位になる。イギリス政府は援助の手を差し伸べず、ダブリンの行政府も何もしなかった(32〜33頁)

その年、全体の餓死者は100万人。
その数字がどんどん積み重なっている時にアイルランドに住んでいた50万人がアイルランドを捨てて国外に逃げ出した。
ほとんどがアメリカ。
一部がイギリス本国へ低賃金労働者として渡って行ったという。
その時に(アメリカに)渡った一家がケネディ一家。
アメリカまで行く船賃がなくて、イギリスの方の港町リバプールに辿りついた一家がジョン・レノンの一家になる。
ジョン・レノンもジョン・F・ケネディもアイルランド人。
同じ「ジョン」。
「ジョン」が付く人はアイルランド人。
ジョン・フォード、ジョン・ウェイン。
みんなアイルランドの人。
スカーレット・オハラ。
『風と共に去りぬ』でアメリカに行った一家に、この物語の主人公のオハラ一家がいた。

風と共に去りぬ (字幕版)



そうやって考えるとジャガイモ飢饉は恐ろしい。
これがまた「ジャガイモ疫病、どうやったら収まるのか」というので研究が始まった。
硫酸銅液体と石灰によって駆除できることがわかって駆除された。
この硫酸銅液体のことを「ボルドー液」という。
それでそれがブドウの葉腐れ病にも効いた。
それでそれをいっぱい使ったというようなことを聞いたことがある武田先生。
一種類のジャガイモが病気になると、わずか2年で100万人。
かくのごとくして、その飢餓や飢饉を避けるため穀物、植物を疫病から守るために様々な薬品開発がこのあたりの飢餓の事件から人類は思いつき「農薬散布」というのが農業の過程の中で入るようになった。
しかもこれは10回以上かけなければいけないのだろう。
だから菌を殺すため大変。
そして恐ろしいのは年々「耐性」が上がる。
菌が強くなってくる。
その他にも立ち枯れ病とか葉巻ウイルスとか、ジャガイモ飢饉の引き金になる疫病というのはもう、絶えず毎年増えている。
去年、湖池屋のポテトチップスであった。
あれは水害だった。
あれは「種イモ問題」。
ポテトチップス販売休止相次ぐ 北海道産ジャガイモ不足で  :日本経済新聞 単純に収穫量の問題のようだが?)
北海道のジャガイモなのだが、ジャガイモの○%を取っておいて、次の年の種イモにする。
それを三年ぐらい寝かさなきゃいけない。
そのイモが無くなったから全滅の危機が。
でも湖池屋はよく頑張った。
輸入物に頼らずに通常の商品を削って看板を守った。
湖池屋は偉い。
武田先生は(おそらくこっそりポテトチップスを食べようとして奥様に)見つかってモノサシで叩かれた。

農業という巨大な文明に支えられて今の文明がある。
その現代の農業は多様性をなくし、米なら米なんかに集約する。
小麦なら小麦に集約。
一点に食べ物が偏ってしまう。
その危険性を。
だから「いろいろ喰わなきゃダメだ」ということ。
日本というのはまだその多様性の可能性を残しているので、この国あたりから世界に発信できることは、そういうことではないかと思ったりする武田先生。

珍妙な話を。
近年の歴史に一つのヒントを与える農業の闘いがあった。
実はこのようなことが世界を動かしているのではないかと思う武田先生。

 一九五八年、中国共産党主席毛沢東は、国内から害虫を駆除することを決定した。(79頁)

今の習近平さんは毛沢東さんのことを心から尊敬してらっしゃる。
習さんは「第二の毛沢東」になりたいのだろう。
自信にあふれた彼(毛沢東)は農業において駆除すべき生物を選び出した。
「排除するぞ!」というので排除すべき生物。
ノミ、ネズミ、スズメ、ハエ。
これを標的とし、紅衛兵を隊長にして全国10億の民に「排除せよ!」。
北京で大音声を発せられた。
これは中国は燃えた。
ノミ、ネズミ、スズメ、ハエ。
「これは中国共産党、我が国のカタキなんだ」と。

国民の努力は、とりわけスズメに関して際立っていた。外に向けて鍋類を(代わる代わる)四八時間叩き続け、消耗して死ぬまで空を飛ぶスズメを威嚇するよう命令されたのである。国民はさらに、スズメの卵を見つけてはつぶした。(80頁)

政府が発表した四万八六九五、四九キログラムのハエ、九三万四八六匹のネズミ、一三六万七四四〇羽のスズメという数値は、その大きさにおいても精度においても驚くべきものである。実際の数値が何であったにせよ、この殺戮のあと、とりわけスズメは著しく減ったらしい。(80頁)

(番組ではネズミを934864匹と言っているが、本によると930486匹)
短期間にこれだけの生物を毛沢東の命令で退治した。
「その年から、ワーッと中国の大地は黄金の実りがたわわに揺れて、豊かな稲が実りました」とはいかなかった。

その結果、人類史上最大級の飢饉が発生し、少なくとも三〇〇〇万人、おそらく五〇〇〇万人が餓死したのである。(80頁)

これは一人の政治家が誤った決定によって人類を殺した最高の人数。
一切殺した人数は発表しない。
これが中国共産党伝統「まずいことは隠す」。

 毛沢東の計画は、生態学者が栄養カスケードと呼ぶ事象を考慮に入れていなかった。(80頁)

まあ「食物連鎖」。
これは一瞬崩すともうこれだけの被害になる。
この間もヒロミさんとそんな話になった。
あの人は猟銃を持って山に入ってケモノを撃っているらしい。
イノシシが専門らしいが、捌くまでやっているらしい。
ヒロミさんの話は何かというと「シカがいかに悪いか」。
もう今、めちゃくちゃらしい。
だから「オオカミを放とう」と。
この間「子供を襲うかも知れない」といって小学校に迷い込んだクマを撃ち殺したら全国から「かわいそうに」という批判が集まったという。
村の人が「じゃ、オマエがクマ捕まえに来い」と。
そりゃわかる。
校舎の中に子供がいるのだから、猟銃会の人は撃つ。
そういう話をヒロミさんとした武田先生。
食物連鎖みたいなことのピラミッドを人為的に人間がいじくると、たちまち全部がおかしくなるということ。
そのことの良い例がこの毛沢東の農業の闘いにあるのではなかろうか。

キャッサバ。
これは実にありがたい作物であり、原産はブラジル。
これはアメリカインディアンも栽培していたそう。
これはイモ類。
「サツマイモに似て根茎で、豊かなデンプンを含む」と。
まだ主役ではないが、熱帯において、東南アジア、西アフリカでは重大なカロリー源となっている。
これは肥料もなく暑く乾いた土地でも栽培が可能。
温暖化の進む地球では今、実は大注目の作物。
実はこれは全く日本では報道されないこと。

一九八三年、コナカイガラムシによる被害は「アウトブレイク」の状態に達し、ガーナの農民は収穫の六五パーセントを失う(五八〇〇万〜一億六〇〇万ドルの損害)。キャッサバの市場価格は九倍に跳ね上がる。苗(新たに植えるキャッサバ)の価格は五・五倍に高騰する。(93〜94頁)

(番組では損害を「1億8000万ドル」と言っているが上記のように「1億600万ドル」。苗が「5.4倍」と言っているが上記のように「5.5倍」)

歴史を知る者にとって、これら一連のできごとは、ジャガイモ飢饉の発生に至った経緯に著しく似通っていた。(94頁)

もうアフリカはただでさえ天候が不順。
キャッサバの不作なんかが続くと本当に殺し合いが始まるらしい。

栄養カスケードはとても美しい。−中略−ハンス・ヘレンは、キャッサバの生態系がそれと同様に予測可能であると考え、コナカイガラムシを食べる寄生虫を見つけられれば収穫量を回復できると期待していた。彼の計画は、毛沢東の計画とは正反対である。(81頁)

コナカイガラムシを殺虫剤で根絶しようという、これがもうアフリカの現実に合わない。
まず殺虫剤を買うお金がない。
そんなところで「農薬をかければいい」なんていう考えでは太刀打ちできない。
このハンスさんが知っているのは自然のルールに従わなければ「カスケード」食物連鎖は守れない。

 コナカイガラムシを攻撃する生物のうちごく普通に見られるものの一つは、ロペスのハチ−中略−と呼ばれる昆虫であった。このハチは有望だった。多産で、コナカイガラムシだけを食べるらしく、殺しのやり口は、恐ろしく効率的であった。ロペスのハチは、コナカイガラムシの体内に卵を産みつける。そこで幼虫が孵化し、その血をすすり、筋肉、脂肪、さらには消化管を食べる。しかもその間、コナカイガラムシの神経系はそのままにしておく。それから脱皮し、その頃には空洞と化している身体の外骨格に穴をあけ、交尾するために飛び去る。(86頁)

コナカイガラムシを全滅させず、その数を保つそうだ。
この「ロペスのハチ」と呼ばれる一種寄生蜂は、コナカイガラムシに取り付くが全部は殺さない。
何でかというと全部殺してしまうと次の世代が生きていけないから。
だからコイツらのためにも。
だから「全滅させない」ということがいかに大事かというのを自然界は知っている。
早速パラグアイからこのハチを取ってきてアフリカの大地、西アフリカ等々でばら撒いたら約二年で。

最初にハチを放ってからまだ二年しか経っていない一九八三年三月には(一〇世代のハチに相当する)、各散布地点から半径一〇〇キロメートル以内にある、あらゆるキャッサバ畑でハチが目撃された。−中略−キャッサバの生産は、魔法にかかったかのごとく回復した。ナイジェリアのキャッサバの生産高は、ハチを散布する以前の一五〇〇万トンから四〇〇〇万トンに増大した。(94頁)

(番組では「1500万トン」を「1500トン」、「4000万トン」を「4500トン」と言っているが)

一九八七年までに、ハチは西アフリカのほぼすべてのキャッサバ栽培農家に到達した。(95頁)

コナカイガラムシによる被害は既知の問題であるにもかかわらず、タイでは(あるいは、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ラオスでも)その到来を阻止することができないでいる。(96頁)

だから今、このハチを散布中だそうだ。
こういうのはやっぱり大事な発想。
『奇跡のリンゴ』の木村(秋則)さん。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)



あの木村さんはやっぱり害虫の研究から。
農薬を使わない。
あの人の本の中で、周りのリンゴ園が殺虫剤をバーッと撒いている時に、彼の農園だけ、リンゴ園だけ殺虫剤を撒かないので、全域の害虫が彼のところにやってくる。
そのやってきた害虫に向かって「俺んとこはオマエらにとって『ノアの方舟』だ」と言い続けたという。
それでエリアの害虫がやってくるのだが、害虫がやってきた瞬間、それを喰う虫がやってくる。
いつの間にか必ずバランスを取る。
リンゴの何%かは犠牲に遭うけれども、リンゴの何十%かは必ず生き残るシステムが畑を支配する。
カスケードの支配が及ぶ。

「チョコレートテロ」と呼ばれるカカオを巡る犯罪があった。

一九八九年五月二二日、ブラジルのバイーア州にあるコンフント・サンタナ・カカオプランテーションの一日は、いつもどおりに始まった。−中略−そのときプランテーションの技術者の一人が、異常を発見する。一本のカカオの木の枝が、がんのようなもので腫れあがっていたのだ。
 コンフント・サンタナ農園は、ブラジル最大のカカオプランテーションの一つであった。ということは、世界最大のカカオプランテーションの一つでもあった。この農園は、フランシスコ・リマ、通称チコ・リマの手で運営されていた。リマは、果実を摘んで開き、種子を発酵させ、カカオをチョコレートに加工するのに必要な最初の数ステップを実行するために、大勢の男女を雇っていた。それによって彼は比較的裕福になり、かなりの権力を持つようになった。地元の組織UDR(地方民主連合)のリーダーでもあった彼の権力は、カカオプランテーションのみならず政治にも及んだ。
−中略−腫れた枝の発見は、そのコントロールを失う最初の徴候であった。彼がもっとも恐れたのは、このがんが、プランテーション全体を破壊する能力を持つ天狗巣病菌(wiches'-broom〔魔女のほうき〕)と呼ばれる病原体によって引き起こされた可能性であった。(99〜100頁)

 天狗巣病は、菌類−中略−によって引き起こされる。この菌類は傷や気孔(葉の表皮に存在する、木が「呼吸」するための、すぼめた口のような穴)を通って木に侵入する。ひとたび木の内部に侵入すると細胞組織を食べ始め、木の成長の様態を変えて、ほうきのような形をした醜い腫瘍(がん)を形成する。ゆえに「wiches'-broom」という名前がついているのだ。時間の経過とともに、この菌類に侵された木は感染に屈する。木が死ぬ際には、ほうきの形をした腫瘍は黒くなり、ピンク色のキノこが生えてそこから無数の胞子が空中にばら撒かれる。そして他の樹木が感染する。(100〜101頁)

他の木に感染すると大変なことになるということでリマさんはすぐに動いた。

スタッフ三〇人が農園内を巡回しながら、全長数マイルの森林の下層に数マイルにわたって植えられていた一〇万本近くのカカオの木を一本一本チェックしていった。すると次々に、問題が見つかった。−中略−緩衝地帯を作り出すために感染した木の周囲に立つ木も切り倒され、それ以外の近くの木は週に一度検査された。(107頁)

ところがそれから、リマの農園の隔離領域の外に立つ二一本の木が感染していることが判明する。(108頁)

これはどういうことかと言うと、天狗巣病というカカオの木の病気がプランテーションの中から発生したんじゃなくて「外からうつされたのではないか」という可能性が出てきた。
外からこの病気がうちのカカオの木に伝染したとなれば、他のプランテーションへの伝染が心配される。

地方の小さい町を歌を歌いながら回っている武田先生。
宮崎なんかでもニワトリとか牛の病気を目撃した。
あれはやっぱりよくない。
人間が人間を疑うようになる。
県境にチェックの農業関係者が立って、入ってくるトラックのタイヤを洗うのだが、その時の目つきが「疑う」。
伝染病の怖さ。

このリマさんは地方のカカオ王であったのだが「全部切れ」というのが他の農園から出る。
10万本を。
「それは勘弁してくれ!」ということでリマさんは泣き叫んだが

CEPLACは、「木を切らなければ監獄行きになるぞ」とほのめかした、あるいは(記録によっては)そうはっきりと言った。リマのプランテーションの木は、一九八九年の五月から一一月にかけて、一万四〇〇〇人時間の労力をかけてすべて切られた。九万八〇〇〇本のカカオの木と、木陰を作っていた一万本以上の熱帯雨林の樹木が切り倒されたのだ。(108頁)

ところが、悲劇はこれだけでは終わらない。

 一〇月二六日、バイーア州のカカオ栽培地域の反対側、リマの農園から一〇〇キロメートルほど離れた地点で、ある農園主が自分の農園で天狗巣病を発見した。(108頁)

 ある農園では、天狗巣病に感染した一本の木に、さらに多くの天狗巣病のキノコに覆われた別のカカオの木の枝がくっついていた。ロープで結びつけられていたという証言もある。−中略−それから数週間、他の農園でも、別の木の枝がくっついた木が次々に発見される。それらも類似のロープで結びつけられていた。(108〜109頁)

凄まじい悲劇なのは、それからわずか二年後、1991年、この地域のカカオ園の75%が切り倒された。
あるいはこの病に倒れて枯れてしまった。
(本には1992年に生産高が75%低下と書いてある)

ロープで枝が結ばれていたという話がほんとうなら、病原体は故意に運ばれたことになる。つまり、それは一種の農業テロリズムが遂行されたことを示唆する。(110頁)

つまり「テロ」は爆弾だけではない。
今、世界が一番恐れているのは「農業テロ」。

posted by ひと at 16:56| Comment(0) | 武田鉄矢・今朝の三枚おろし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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