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2018年06月01日

2017年11月13〜24日◆世界からバナナが無くなる前に(後編)

これの続きです。

(番組冒頭の小説を読まない話やドラマの話は割愛)

「農業テロ」といっても「農作物が枯れるだけじゃん」と今、お思いだろう。
ゆっくりこれからこの話を広げていく。
アマゾンの熱帯雨林。
そこに広がっていたカカオのプランテーション。
それが木を切り倒されたおかげで、砲撃を受けたような穴だらけの部分ができてきた。
この時にブラジル農協の方が考えたのは「テロだ!」と。
人がロープで結んでいる以上は。
「犯人は誰だ!」ということ。

考えられる説の一つは、ブラジル産以外のほとんどのカカオを栽培しているコートジボアール、ガーナ、マレーシアに住む誰かが、自国のカカオ生産を有利に導くために、ブラジルのカカオ生産の壊滅をもくろんだというものである。(110頁)

事実として第二次世界大戦中、戦争を行った国々は全部、実はこの農業テロの病原体の研究をしている。
ナチス、アメリカ、ソ連、日本。
この軍部は農業テロの研究をしていた。
毒ガス等々のことを言う方がいらっしゃるが、農業テロの方が被害がデカい。
あのアイルランドから100万人以上の餓死者を作り出すことが、たった二年でできる。
凄まじい被害が農業テロでは可能。
だからミサイルなんか研究している国は火を点けるのがわかるのだから、農業テロは怖い。
そうやって考えると、ちょっとやっぱり世界の見方も変わってくる。

ブラジル農協は必死になってこの犯人捜しも懸命にやったという。
しかしカカオの苗が高騰し、農民の中から農協を疑う声も上がった。
すごい、もう疑心暗鬼。
何で農協を疑うか?
カカオの病気をした木を始末した後「新しいカカオで、何とかもう一回頑張ろう」と思う人がいるとする。
農協に「カカオの苗を売ってくれ」というと五倍以上する。
もう病気で無いから。
ジャガイモが無くなったのと同じ。
種イモが無いワケだ。
それで「農協が農民にカカオの苗を高く売るために病気を広めたんじゃないか」というので、この手のことは内部で疑心暗鬼になる。
この著者がいいことを書いている。
農業テロのようないわゆる「農作物をダメにする」ということは「人間の性根まで腐らせる」という。
(この記述は本の中に発見できず)

バイーア州には六五万ヘクタールのカカオ園があったが、一九九二年には四〇万ヘクタールのみが残り、残った土地でも、かつてほど多くのチョコレートを生産することはできなかった。天狗巣病は根絶されず、完全な回復を図ることができなかったために、生産高は七五パーセント低下する。(114頁)

ブラジルは世界第二位のチョコレート生産国であった。それからたった四年後には、チョコレートの純輸入国になっていた(115頁)

何せ何にも足取りも証拠もつかめないわけだから、犯人捜しはほぼ絶望的。
今ならカメラか何かで撮っているから「犯人が」とか言うが、何十万ヘクタールの広さのあるエリアで、そういうカメラを置くのも無理。
ところが犯人がわかる。

 その後一〇年以上が経過してから、驚くべき答えが得られた。二〇〇六年になって、バイーア州のカカオ危機の関係者が誰も知らない一人の男が、ある告白をした。ジャーナリストのポリカルポ・ジュニオールが行ない、大衆誌『Veja』に掲載された四つのインタビューのうちの一つで、この男は、「私、ルイス・エンリケ・フランコ・ティモテオは、バイーア州への天狗巣病の植えつけに関係した一人です」と述べた。−中略−ティモテオは、最初の感染が発生する二年前の一九八七年、イタブナ〔バイーア州の都市〕のバーで飲んでいた。そこで五人の男−中略−と会う。−中略−彼らは−中略−カカオ産業を破壊することで、農園主の経済的、政治的権力を打破しようと画策していたのだ。−中略−地域の産業を破壊するのではない。人民のために、農園主の手から経済的な権力を奪取するのだ。そう考えたのである。この計画には「南十字星作戦(Cruzeiro do sul)」という名前さえつけられた。(115〜116頁)

 六人の男たちのうち、アマゾン地方についてもっとも知悉していたティモテオは、アマゾンを旅して計画に用いる天狗巣病菌を集めた。五〇時間以上バスに揺られて−中略−天狗巣病に感染した枝を集め、袋に隠してバイーア州まで持ち帰ったのである。−中略−こうして彼は、バイーア州とアマゾン地方を何回か往復することで、合計しておよそ二五〇〜三〇〇本の感染した枝を運んだのである。
 ティモテオがバイーア州に戻ってくると、六人は、CEPLACのロゴが描かれた車に感染した枝を積んで
−中略−沿道の木に感染した枝をロープで結わえていった。(116〜117頁)

(番組ではティモテオが主犯格と言っているが、すでに5人の男が犯行を企てており、ティモテオは6人目として加わった)
現実に犯人の仲間たちはその後、市長や農協関係者になっている。
政治的逆転というのは本当に怖い。
彼らのテロは大成功した。
ブラジル農協から憎きヤツを全部叩きき出して、自分たちが農協のトップに収まった。
ある意味ではよかった。
「テロ成功!」というワケだ。
ところが、何で自白したか?
ブラジル農協が潰れてしまった。
そこの組織の偉いさんになりたかったが、そこの組織そのものがカカオの不作で潰れてしまう。
それでちっとも美味しくなくて、ヤケになって喋っちゃった。
(本によるとそういう話ではないが)

そのせいで二五万人が職を失った。プランテーションの雇用者とその家族を含め、一〇〇万人近くが、都市へ移住した。(118頁)

6人は逮捕されたが、裁判では証拠不十分で無罪放免。
残った事実は何か?
世界第二位の稼いでた商品をブラジルが失くし、さらに苦しい貧困に陥ったという。
テロをやろうという方、よーく考えといてください。
これがテロの報い。

テロリストの人たちが農業の方に向かないように祈るばかりだと思ったが、でも日本でも鳥インフルエンザ等々があった。
あの時に鳥インフルエンザとか狂牛病等々が襲った村町をコンサートで流した武田先生。
その関係者の顔つきは、そういう顔つきだった。
鳥インフルエンザの時、もう町の名前を言うのをやめるが、県境で「そういや、何か月か前からか、○○国からの観光客が妙に増えたけん・・・」と。
それを言うと・・・。
それと渡り鳥に菌を・・・。

イムジン河



『イムジン河』の歌詞ではないが「水鳥自由に飛び交い群れ」と言っている場合じゃない。
その水鳥が大変な・・・。
決してそこの国の方を疑っているワケではないが、農業テロの恐ろしさは「そういう目」になってしまうということ。

後日談。
ブラジルはこれでカカオがすっかりダメになった。
急激にカカオ生産で名前を上げたのはガーナ。
ブラジルから西アフリカ。
アフリカにカカオ生産の主力基地は移った。
ここではまずはっきり言えるのは天狗巣病がまだ侵入していない。
そしてもう一つある。
ここが農業の面白いところ。
日本なんかも怖い。
確かに鳥インフルエンザも狂牛病も怖い。
色々ある。
だけど一番心配なのは中国。
アメリカも怖い。
耕作面積が広すぎる。
日本でこの手の心配がちょっと安心できるのは、スケールが小さいから管理が届く。
今、西アフリカでカカオが世界でNo.1になっているのは耕作面積が小さい。
小規模栽培。
だから天狗巣病が発生しても、いわゆる何坪かを抑えれば防げる。
発見まで二日も三日もかかるような広大なプランテーション農園という所が一番怖い。
今、カカオ生産が西アフリカでバーッと伸びているのは、この耕作面積の狭さ。
このへんが面白い。
プランテーションのような巨大さはなく、零細であるがゆえに、カカオの病が出れば、その飛散は小さい規模で食い止めることができる。
だからデカい農業生産をやっているところは、皆この農業テロの危険性がある。
そうやって考えるとロシア、中国、アメリカ気を付けて。
特に中国。
軍事費にお金を使っている場合ではない。

 アフリカに移植された当初、カカオはアメリカ大陸では知られていなかった難題につきまとわれた。その一つは、カカオの木の葉が赤くなり、若芽が腫れる枝腫病であった。この病気にかかると、やがて木は死ぬ。(123頁)

病原菌はアリによって拡大する。
今年(2017年)の日本の夏。
ヒアリ。
つまりその手のアリが世界中に横行する時代に突入している。

熱帯雨林の木陰に造成されたカカオプランテーションならどこでも、一〇〇種を超えるアリが見つかるはずだ。それらのアリの多くは、まだ名前がつけられていない。(126頁)

生態なんか全然わかっていないアリが。
この枝腐れ病を広げるアフリカのアリというのは地面ではなくて、木のてっぺんに住んでいる。

 熱帯雨林の樹冠に生息するアリには、羊飼いがヒツジの面倒を見るようにコナカイガラムシの面倒を見、それに依存して生きている種がある。(127頁)

このアリたちは名前も付いていないが地面ではなく木のてっぺんに住む。
このアリたちが害虫のコナカイガラムシと共生するということ。
一緒に生きていく。
このアリはコナカイガラムシを飼育する。

コナカイガラムシは樹液を吸って生きているが、−中略−余った糖分を排泄する必要がある。これはアリにとってはマナ、すなわち栄養満点の甘いミルクだ−中略−アリは排泄された糖分を摂取するだけでなく、糖分の供給を独占するためにコナカイガラムシの面倒も見る。コナカイガラムシの群れのうえに、雨や寄生虫や捕食者(さらには殺虫剤)から守るための小さなテントを張るのだ。(127頁)

(番組ではアリがコナカイガラムシに「カカオの葉っぱを喰わせる」と言っているが、本の内容はそうではない)

西アフリカで栽培されているカカオの木だけでも、アリが面倒を見るコナカイガラムシが二〇種以上見つかっている。(128頁)

その葉っぱは喰われ、カカオの実も喰われる。
このカカオの実を砕く時のアリのツバ、唾液に枝腐病の菌が住んでいるという。
これはどうしようもない。
(このあたりは本の内容とは違っている)
このアリが住む場所、このアリが虫を飼っている場所が木のてっぺん。
農薬が届かない。
ヘリコプターを雇って上から撒くと経費がかかりすぎる。
それでもう、どうしようもないということ。
これは一旦広まると、だからもう切り倒すしかない。
ところが『奇跡のリンゴ』の木村さんみたいな人がいる。

 早くからハリー・エバンスらは、木を救うためにアリ同士の戦争を利用する可能性を示唆していた。カカオの樹冠を支配するアリの種のほとんどは、カカオの天敵であるように思われるかもしれないが、ツムギアリと−中略−天敵ではなく、カカオの木に非常に有益な働きをする。有害なコナカイガラムシの種を保護したりはせずCSSVや疫病菌を拡散することがない。さらにはカカオの木を蝕む害虫を食べ、他のアリと積極的に戦う。これらのアリを用いたほかのアリのコントロールは、これまで長く実践されてきた。(130頁)

このハリー・エバンスさんは何と、アフリカのジャングルにこのツムギアリを放った。
今のところまだ結果は出ていない。
(ハリー・エバンスがツムギアリを放ったという話は本には出てこない。番組では「エバンズ」と発音しているが、本によると「エバンス」)
作物を守るための方法としては、彼は「絶対に自然に従うべき」と考えているそうで、農薬を使うというのは、そんなことをやっちゃいけない。
(このあたりの話も本の中には発見できず)
農薬も高いし農業が成立しない。
零細農業だから。
まだ未知なのだが、うまくいきそうな様子だそうだ。
だから「虫を退治するのは虫」という、この発想が抜群。
ツムギアリの他、コナカイガラムシを養うアリに寄生して体と免疫系を乗っ取る「ゾンビ菌類」の研究も始まった。
自然界にいっぱいある。
「腸」のところで話した。
このあたりの話かと思われる)
コナカイガラムシを養うアリという種類に特化して、小さな虫が寄生して脳を侵す。
脳を侵しておいて外側から「ライダーロボット!」みたいな感じで操作する。
そういうヤツがいて、乗っ取らせておいて、こっち側に持ってくるという方法を考えれば、自然界に沿って退治できるのではないだろうか、という。
これも自然界にある出来事で。
食物連鎖というものは実に細やかで、操る虫がいると、その虫を操る虫というのもいるという。
これは面白い。
そのうちに別個の女性が凄いことを発見した。

 ヒューズと研究を行なっていた学生ミーガン・ウィルカーソンは、非常に安価な方法でカカオ病原体のコントロールを試みようとしていた。彼女は、アリがコナカイガラムシのために作った小さなテントを、石鹸水を使ってこじ開けたのである。石鹸水はテントを破壊し、何匹かのコナカイガラムシを殺した。(132頁)

これが世紀の大発見。
それで「西アフリカの農業にもこれは使える」ということで。
ツムギアリと石鹸水。
この二つで今、カカオを守るという方策が成功しつつあるという。
『奇跡のリンゴ』の時に木村さんがリンゴに寄ってくる害虫をやっつけるために、酢とかお醤油とか何でもかける。
あれはやってみる価値があること。
とりあえず危険じゃないもので一回試してみるというのは。

虫が付く。
その虫をどうやって駆除していくか。
我々は、いとも簡単に「害虫」とかっていう呼び方をするが、そう一概には言えない。
木村さんが昔、お話しした時にいいことを言っていた。
リンゴに虫が付く。
だけどそのリンゴの葉っぱを喰うという害虫は葉っぱを喰うから顔つきが優しい。
それで、その葉っぱを喰う虫を喰う天敵「益虫」というのがいる。
ガラが悪い。
その木村さんのたとえが抜群にわかった武田先生。
虫と虫の関係は複雑。
そのよい例。

カカオと同じく、コーヒーはさまざまな脅威に直面している。その一つは、コーヒーの種子に穴をあける甲虫、コーヒーノミキクイムシである。−中略−一九世紀のセイロンで、コーヒー園を破壊したものと同じさび菌も脅威を与えている。(132〜133頁)

カカオとコーヒーの違い。
例えばコーヒーは最初から名前が付いている。
グアテマラ、コロンビア。
生産地に名前がそのまま付く。
コーヒーは大農園よりも中小の零細農園がコーヒーを支えている。
そっちの方が病害虫が広がりにくい。
大プランテーションにすると一発でコーヒーは滅びる可能性がある。
そうやって聞くと小さいスケールは意外と大事。
(本には公的な資金援助を受けた研究が一因などという記述しか発見できず)
ここからがまた面白い。

 ラテンアメリカの、特に木陰でコーヒーが育てられている場所では、アリはコーヒーの木のうえでコナカイガラムシの面倒を見ている。しかしここからのストーリーは、カカオの場合と異なる。コーヒーの木ではコナカイガラムシは菌類病原体に感染する。この奇妙な病原体は、コーヒーさび病菌にも寄生する。コナカイガラムシがたくさんいる場所には、この菌類病原体も豊富に存在し、その結果、それに感染してコーヒーさび病菌は減少する。(134頁)

だから多少被害は出るが、コナカイガラムシを全滅させるとコーヒーさび病が発生する。
だからコーヒーの場合はコナカイガラムシをゼロにせずに一定の被害が出ることを儲けに入れておいて全滅させずに飼いつづける。
まるでワクチン。
ワクチンを打った木のように収穫分のコーヒーが計算できる。
このへんは面白い。

 生物と他の生物が行なっている自然な相互作用を作物(と私たち)に有利な方向に変えるために作物の自然史や生態を研究する学問は、ときにアグロエコロジーと呼ばれる。(134頁)

今、もの凄い重大な学問として世界中の注目を浴びているらしい。
そんなことを考えると木村さんは先駆の人だったのだ。
ちょっとの犠牲は払っても「バランス」だという。
全部正義の主張をしない。
ちょっと悪いところを含む。
そのことによって社会全体がをしなやかさを持つ、タフさを持つ。
何か「排除しない」て大事。
いろんなことに繋がる。
このアグロエコロジーは日本なんかは大得意だと思う。
普通に市井に木村さんみたいな直感でこの道をたどり着いた人がいて、巨大ではない、プランテーションではない、零細であるということが農業を守る重大なヒントになっているというのは、何か我ら小さく弱い者を励ましてくれる。

ヨーロッパのとある国では、世界中の原種の種を氷河の底に貯蓄している。
冷凍保存できるように。
トウモロコシだって本当は種類が山ほどある。
それが一種類になることの危険さを知っているヨーロッパの進んだ国では、世界中のトウモロコシの種を冷凍保存で貯蓄している。
今、急速にかつての人々の食べた種が減りつつある。
それをキープしようという運動があって、氷河の中に種を蓄え続けている国があるらしい。

posted by ひと at 17:13| Comment(0) | 武田鉄矢・今朝の三枚おろし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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