我々はあんまり敏感に感じていないかも知れないが、人間の感情の半分以上は匂いが動かしているのではないか?という、これはアメリカのビル・S・ハンソン博士。
人間学というか行動学の本。
匂いが人間を動かす、という。
それから武田先生は現実に悩んでいるが、自分の体内から発する加齢臭。
もう加齢臭を気にする年になった。
「そんな酷い臭いはしてないハズだ」と思ったのだが、ちゃんと臭いようだ。
奥様から叱られた。
自分でやはり何とかしなくちゃならんなと思って。
気を付けることがまず大切だと思う水谷譲。
奥様から指導を受けているのは食べ物。
そこから加齢臭の原因のナントカカントカ(「2-ノネナール」を指していると思われる)が出てくるというので、そこを一生懸命洗った方がいいと言われるので、耳の後ろをよく洗うといいと思う水谷譲。
いろいろ手はあると思うが、何ゆえの加齢臭か?というのは今週の大まとめで、このハンソン博士の独自の考えを皆さんにお伝えしたいと思うから、何等かのお役に立てばというふうに思う。
匂いというのに随分人間が動かされているという証しとして、よくテレビ番組、テレビバラエティー等で味覚を刺激する番組というのがあるが、味覚というのはたった五種類しかない。
匂いというのは驚くなかれ、人間で500種類あるそうだ。
だから味覚よりも嗅覚の方があてになるのではないか?という。
ちょっとその実験をやってみたいと思う。
目隠しをし、鼻から息を吸えないようにノーズ・クリップをつけた学生のグループに、ケチャップとマスタードのちがいを言い当ててもらう。しかし誰も正解できない。(74頁)
簡単にケチャップとマスタードを言い当ててしまう水谷譲。
ハンソン博士、当てられましたよ。
被験者はアメリカ人。
(フリードリッヒシラー大学の学生が対象のようなので、被験者はドイツ人だと思われる)
アメリカの方は鼻がワリと日本人よりも敏感ではないと思う水谷譲。
大味なものを食べたりする。
日本人の方が旨味を感じるというか。
これはアメリカの本なので、アメリカの人で試したらしいのだが、誰も当てられなかった。
この博士が言いたいのは「私達が『味』と呼んでいるのは殆ど『匂い』ですよ」という。
味覚と嗅覚、どっちが優勢かという。
残念ながらすっかり水谷譲に見破られてしまって実験としては大失敗に終わった。
先週もお話したがコロナが匂いと味覚については過敏なウイルスであるという。
だからコロナに罹ってしまうと匂いがダメになる。
次に味覚がダメになるという。
彼等の進入路が匂いを嗅ぐという細胞を占拠することで、コロナというのは匂いについて酷く警戒心を持っている。
つまり匂いがバレたらコロナというのは正体が見破られるということを知っていてあの形になったのだ、と。
「匂いの能力については大きな希望があるぞ」と、この著者が。
アルツハイマー等も、匂いに敏感な嗅覚細胞、匂いを嗅ぐという細胞、これを維持すれば予防になるのではないか?
(このあたりは本の内容とは異なる)
水谷譲の母が凄く気にしていて、「何かの本でラベンダーの香りを嗅ぐといいと言われた」と。
水谷譲はアロマを買って母にプレゼントをしたら、それをずっとアロマを嗅いで「予防だわ」と言ってやっている。
パーキンソン病とアルツハイマー病に関しては、嗅覚の低下がこの病気のごく初期の患者に表れる症状の一つであることがわかっている。(303頁)
だから「いい匂い」とか「ああ、クサいわ」とかと言っているとこれが嗅細胞が保たれてこれがアルツハイマー等の認知症の予防になるという。
だから老人方に対して、そういう意味で鼻を鍛えましょう、と。
匂いに敏感であるというのは、認知症予防には強力な助っ人らしい。
ここから話を広げていくが、確かな数値が決まっているワケではないし、だから「その証拠だ」と言えないところが辛いのだが。
水谷譲の母は一人暮らしでネコを飼いたがっている。
犬がいい。
今はやりのトイプードルはどうか? チワワは? じつはDNA艦艇の結果、すべての飼い犬が共通の祖先をもつことがわかっている。彼らはみな、ハイイロオオカミの子孫が飼い慣らされたものなのだ。(88頁)
犬が欲しがりそうな情報のほとんどは、犬の肛門嚢とその近くの皮脂腺から分泌される分泌物質の中にある。(87頁)
どうやら犬は、人間に近寄ってきた最初の動機も匂いを目当てに来たんじゃないか?
人間の匂いがオオカミにはいい匂いがしたらしい。
その匂いとは何かというのが最近の研究ではっきりしてきたのがオキシトシン。
オキシトシンは母親と赤ん坊の心のつながりや、その他の信頼関係を深めるホルモンだ。オキシトシンは、人と人が、とくに母親と赤ん坊が見つめ合ったときに分泌されると考えられている。そしてある研究によって、犬がこのメカニズムを利用して人との心の結びつきや深い愛着関係を作りだしている可能性が示唆された。(89頁)
犬はこれで人間の生活に役に立つ動物となり、彼等は飼い主に頭を撫でられると穏やかな表情になるという。
これはオオカミだった時の直感でオキシトシンの匂いに反応していて、飼い主がオキシトシンの匂いを出すもので彼等もリラックスして穏やかな表情になるそうで。
鳥は無嗅覚で、匂いがわからないと考えられていた。鳥は視覚と聴覚に頼って生きている、というのが科学界全体の合意だった。(94頁)
ところが解剖してみると立派な嗅覚のエリアを脳に持っている。
面白い実験をした人がいて
ヒメコンドルが好む狩り場で、豚の死骸を使った実験を行なった彼は、死骸が不快や部の中に隠されていて目に見えない場合、コンドルは死骸の在りかを見つけられなかったと報告した。−中略−一方、死骸が開けた場所に置かれているときはそれをめざして急降下してきた。というわけで、ヒメコンドルは視覚だけを頼りに狩りをする、と結論づけるのが適切だと思われた。え、本当に?(95頁)
鳥についての実験だが、タカ、ハヤブサ、コンドル。
豚の死骸を開けた草むらにポンと置く。
もう一方はゴチャゴチャっとした藪の中に置いておく。
どっちに寄って来るかというのを実験したという。
これは1980年代のことらしいのだが。
(本によるとこの実験は1820年代)
そうするとタカ、ハヤブサ、コンドルなどはやはり開けた草地に置いてある方がバーッ・・・
あれは隠すとダメで、目で見てやってきてるんだということで「目を中心に彼等は獲物を獲っているんだ」ということになったのだが、この実験は間違えたみたいで
ヒメコンドルは死骸が間違いなく「賞味期限」を過ぎていることに気付いて、無視することにしたのだ。(97頁)
隠した方の肉が古かったようで
ヒメコンドルが食にうるさく、その鋭い嗅覚が選んだ美味しいごちそうしか狙わないことを示していたに過ぎなかった。(97頁)
ハイエナとかもみんなそうだが、ちゃんと匂いでジャッジしているらしいのだが、死後一日しか食べない。
直感であるらしい。
そして繰り返しになるが海鳥などもそうで、アホウドリ等を観察するとあの広大な海原で視覚で魚群を探知する、これはもう不可能に近いという。
何で探知するかというと匂い。
植物プランクトンをオキアミが食べること、そしてその際にDMSが大気中に放出されることを知っていた。彼女はまた、オキアミがアホウドリの好物であることも知っていた。−中略−DMSは、間違いなくアホウドリを餌へと導く手助けをしていた。(99頁)
地球の磁場が彼等を導いているのだろうか? ある種の鳥はたしかに磁場を手がかりに進む方向を決めているが、いくつかの研究から、ミズナギドリ目の鳥は少なくとも磁場だけに頼っているわけではないことがわかっている。−中略−アホウドリが進路を知る際には嗅覚が大きな役割を果たしており、(100頁)
これらの鳥は、陸標の不足を補うために、海の上を行ったり来たりして海の匂いの地図を描き出し、それを頼りに海から立ち上がる匂いの移ろいをたどって、次の夕飯を見つけられるのかもしれない。あるいは営巣地へ戻れるのかもしれない。(101頁)
海なんか私達は潮の匂いしか感じないが、鳥から言わせるといろんな匂いがある。
鳥と魚は嗅覚がないと思っていた水谷譲。
魚の嗅覚についての最近の研究から、−中略−別個の三つの神経経路があることが確認できた。−中略−一つ目の神経経路は社会的行動を誘発する信号(捕食者の接近についての警告を含む)を運び、二つ目は性ホルモン、三つ目は食物の匂いを伝える。(123頁)
排卵後のメスのキンギョのフェロモンの匂いを嗅いだオスのキンギョは、自動的に魚精の量(精子の放出量)を増やす。(123頁)
魚類にとって海は広大で深さもそれぞれ違う。
その深さの違いが魚にそれぞれ独特の嗅覚を敏感にしているという。
これは想像がつかないのだがこんなヤツが魚の中にいる。
深く暗い深海でパートナーを見つけるのは容易なことではない。だからこそ、小さな体のアンコウのオスは、匂いでメスを嗅ぎ当てる(125頁)
オスは凄く小さい。
キャラメルコーンの袋がメス。
オスは確かキャラメルコーン一個か二個ぐらい。
ここから凄い。
オスは小さくメスは何倍も大きい。
小さな体のアンコウのオスは、匂いでメスを嗅ぎ当てると、その身体に強く噛みついてけっして離すまいとする。−中略−
深海に棲むアンコウのオスがメスの身体に噛みつくと、二つの身体は徐々に溶け合い−中略−その間にオスは両目を失い、精巣以外の嗅覚を含む体内のすべての器官が退化していく。(125〜126頁)
昨日は鳥の話、それから魚類の話もしたが、もう少し魚の方での匂いの話も続けてみたいと思う。
帰巣本能。
(番組では「きすう」と言っているようだが多分「帰巣(きそう)」)
これもまた匂い。
サケ。
彼らがはじめて塩辛い海に下ってきたときから二年〜八年くらい過ぎた頃で、−中略−故郷から何百キロメートル、あるいは何千キロメートルも離れた場所にいる。−中略−
科学の世界では、サケは地球の磁場を羅針盤代わりにして生まれた川に帰るのではないか、と考えられている。−中略−サケはまた視覚的な目印も確認できるにちがいない。ひょっとすると時間の流れも追えるのかもしれない。しかし自分が生まれたその川床を探し当てる際には、サケは嗅覚に頼っている。−中略−おそらく彼らは1ppm(一〇〇〇万分の一)の濃度でも、あるいは1ppt(一兆分の一)の濃度でさえも、匂い分子を検知できるだろう(129〜130頁)
生物はこれほど左様に匂いを嗅いでいる。
「匂いというのは命を動かしているんだなぁ」と。
まことにプライベートなことだが、一月に博多の街に帰った。
それはお喋りのお仕事があって、もう一本歌歌いがあって。
武田先生の古里・博多だが、風景が変わってしまった。
もう博多は大都市になってしまって。
武田先生の友人が、地名の名前は凄くいいのだが桜坂というところにいて、彼のお店の二階が空いているのでそこをちょっと宿泊所に使った。
武田先生も博多でホテル以外に泊まるのは本当に珍しい。
奥さんがアラジンの石油ストーブを一月だったから点けてくれて、窓も少し換気の為に開けてくれて。
ヤツのお店の二階でちょっと一杯呑んでいた。
もう泣きそうなぐらい懐かしい。
特に一月から関東地方は乾燥が続いていたものでカラカラという時に、博多に帰ったら雨だった。
そうしたら瓦屋根にサーッと冬の博多の雨が通り過ぎてゆくと香りが立つ。
何か街の匂いが・・・
もう全身脱力。
何か持ち上げる杯すらも重たくなって、そのまま動かない70半ばの爺さんという感じになってしまって。
もう一つ、まだ終わらなくて、ちゃんとやらなきゃと思うのだが。
実家に帰って、今は親戚の子が住んでいて、武田先生が大きくなったあの例のタバコ屋。
イク(母)と嘉元(父)に育ててもらった実家だが、そこの掃除をやらないと。
というのは姉がしっかりやってくれればいいのに、母の服とか全部処分しきれずに置いてある。
その長女も逝ってしまったものだから、長女の着ているものも全部あるし、これを片付けきれない。
姪っ子の子供なのだが、祖父母の大事なものだから勝手に手をつけてはいけないと言うのだが、そんなもの祖父母のものを取っておけない。
引き出しを開けて見たらもう凄い。
武田鉄矢の切り抜き。
ジンとはもちろんくるが。
それとか姉達の通信簿、武田先生の通信簿、卒業アルバム。
何と福岡教育大学に合格した時に大学から届いた合格通知書。
取ってある。
申し訳ないが数葉の写真を抜いて全部捨てた。
それでその時に片付けでホコリが凄くて。
奥様も一生懸命やっている。
でもそれは昭和からたまったホコリだから「触るな触るな」ばかり言い続けてこのザマ。
それで二階の窓を開いた。
風がその窓から入って来る。
実家の縁側の匂い。
あの時にサケの気持ちになって。
何か「俺の源流だ」と思って。
匂いというのが人間を操るというのはしみじみわかった。
仮説ではあるがビル・S・ハンソン博士はこんなことを言っておられる。
地中海に咲く怪しげな花だが「デッドホースアラム」という花がある。
見た目は、巨大な肉色をしたカラーの花だったが、腐りかけた死骸を思わせるとてつもなく嫌な匂いがした。(274頁)
この花の苞の入り口は、匂いだけでなく感触も腐った肉のようだったのだ。苞から突き出したしっぽのようなものは温かく−中略−苞の奥に入ったハエたちはしばらくそこに閉じ込められ、身体中花粉まみれにしてから外部に出ていく。その後次の花まで移動した彼らは、意図せずして受粉を完了させることになるのだ。(276頁)
この嫌な臭いこそ、子孫を残すこの花の適応の術。
健康なハエは少量の非常に誘引性の高い性フェロモンを放出していた。病気のハエの匂いを分析してみたところ、彼らが同じ性フェロモンを、健康なハエの二〇から三〇倍多く生成していることがわかった。(281頁)
健康なハエたちは、明らかに病気のハエに強く誘引され、次々と病気に感染していった。つまり病原菌がハエのフェロモン生成システムを「ハイジャック」してフェロモンの生成量を増やし、そのハエの集団内で自らが増殖できるようにしていたのだ。(282頁)
(番組ではこの病気になっているハエが高齢であるような説明をしているが、本の中にはそのような記述はない)
みんな「ウイルスとか頭がない」と言うが頭がいい。
もしかするとだが、ここから寄り道をするが
あのコロナもこの病原菌と同じで、もしかするとそうかも知れない。
インフルエンザもそうだが、ウイルスがちょっと弱っていた老人にとりつく。
そうすると凄く侵入しやすい。
臭いにも鈍感だし。
それで更にウイルスを広げる。
それでここから加齢臭の問題。
この手のヤツを相手にする為にはどうするか?
年を取っても「コロナに反応するぞ」「インフルエンザに反応するぞ」と思うのであるならば、嗅覚の低下を何としても防ぐ。
それが実は健康な老人の施策の一つではないだろうか?
恐らく人の鼻は脳の異常について真っ先に本人に連絡をしてくれる感覚かも知れない。
これから先、我々の一番恐ろしいのは認知症。
そういうことでは加齢臭に敏感で、己の体臭に悩むという老人は認知症からより安全な道を見つけるという。
だから「臭いを指摘されたから侮辱され」たとか、最初に武田先生が言ったような怒り方はしないで、「ああ、俺が臭いのか」という。
その臭いを「あ、やっぱ俺臭いわ」と気づくうち、アナタは認知症から遠ざかっておりますよという。
そういう意味で決して暗い話題ではないという。
「万葉集・古今集・加齢臭」
いろいろ。
万葉集は半分ぐらい女性の香りの歌。
そういうこと。
「たらちねの…」で始まる五七五七七。
日本には今、大河ドラマでもやっているが香道。
お香を嗅ぐ香道。
これは意外と武田先生もお使いでお香を買いにやらされるのだが、並んで買う人がいる。
人気。
そういうことを考えると加齢臭は確かに嫌なものだが、一種老いの目覚めとしては一つの目印になるのではないかなと思う。
世界を見る為には「目」だけでなく嗅ぐという「鼻」も大事ではなかろうか?
ささやかなミニミニ知識だが、
香水産業は−中略−二〇二五年には年間売上高五〇〇億から九〇〇億ドルにも達すると考えられている。(295頁)
だいたい約13兆円の香水が売れているそうで、巨大な費用を世界は臭いに使っているという。
「自分の臭いに敏感でありましょう」というお誘いだった。