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2025年06月29日

2025年4月25日〜5月9日◆りんごの物理(後編)

これの続きです。

伊与原新さん、文藝春秋社「宙わたる教室」という大変興味深い小説だが、これは小説だから物語がある。
(この番組では物語の部分には)触れていない。
武田先生がお話しているのは、その中の実験の様子だけを語っている。

本に戻る。
伊与原新さんの「宙わたる教室」。
「(今朝の)三枚おろし」的には「りんごの物理」ということでお話している。
この中でだんだん魅せられていったのだが、火星では夕日は青い。
この夕日の青というのはオポチュニティというNASAが打ち上げた火星探査機が送って来た映像。
このオポチュニティ自体も感動の物語。
これは問題から言う。
火星の夕日の青というのが実験室でやったよりも薄い。
本物の火星の夕日の青というのはもの凄く色が深い。
幻想的。
あの色を出す為には火星の土がわからなければダメだ、と。
酸化鉄はたくさん入っているそうだが、もう一つ重大なのはどうも火星には間違いなく水があるらしい。
その水が大気中に相当飛んでいるのではないだろうか?
これはどうしてそう言えるのかというと、クレーターでわかる。
火星のクレーターは月のクレーターとは違うそうで。
月のクレーターは水谷譲もご存じだと思うが丸い縁。
ところが火星のクレーターはその丸い縁にフリルが付いている。
花丸みたいな。
ヒラヒラと付いている。

「いくつか仮説があるんだけど、決着はついてない。有力なのは、氷や水が原因だって説」−中略−
火星表面の平均温度はマイナス五十五度と極低温であるために、地表や地下には水や二酸化炭素が凍った氷が存在すると考えられている。
 隕石が衝突すると、凄まじい熱でその氷が一気に融け、大量の水をエジェクタが取り込んで泥流となる。
−中略−ランパート・クレーターのローブは、それらが孔の外側に流れ出て堆積したものという説らしい。(174頁)

そのクレーターを実験で作ろうとこの夜間高校の生徒達が盛り上がる。
火星のクレーターを実験で作ってみようと話が弾む。
それでオポチュニティから報告でわかっている酸化鉄を含み、微量の鉱石、火山灰、そして水。
こういうのを混ぜないと火星の土ができない。
何で火星の土がわかるかというと、成分表をオポチュニティが送ってきている。
それで、地上で火星の土を再現できる。

「ほんのちょびっとある大気はほとんどが二酸化炭素で、地表の気圧は地球の〇.六パーセントしかない。(191頁)

地球とは全く違う自然が赤い青空、青い夕日を出現させているというワケ。
それにしてもオポチュニティの活躍なのだが、火星探査機オポチュニティ。
これは凄い。
武田先生は初めて知った。

 オポチュニティは、−中略−二〇〇三年七月に打ち上げられ、−中略−二〇〇四年一月に火星に到着。−中略−
 設計段階で想定されていた運用期間は、約三カ月。
−中略−
 そして気づけばなんと、十四年。
−中略−しかし二〇一八年、大規模な砂嵐に襲われて長時間日光が遮られ、とうとう太陽電池がダウン。機能の回復ができず、通信が途絶えてしまう。−中略−ミッション終了が宣言された。(101〜102頁)

「開発した技術者たちも、いずれ塵によって動かなくなるのは避けられないと考えていたようです。火星で三カ月も働けば、砂塵が太陽電池パネルに積もって発電できなくなるだろうと」
「なのに、なんで十四年ももったんですか」
「大きな理由は、パネルに積もった塵が露でうまく洗い流されたり、季節風のおかげで吹き飛ばされたりしたことだそうです。
(115頁)

「彼に、オポチュニティの運用が終わったときのことを聞いたことがあるんです。八カ月にわたって通信が途絶えていたオポチュニティに、いよいよ最後の信号を送ることになった日。管制室にはミッションに関わった人たちが集まった。そして、短い信号を四回発信。やはり応答なし。『十五年間の任務、ご苦労さま』。そんな言葉とともにマネージャーがミッションの終了を宣言したときには、みんな泣いていたそうです」(115頁)

(番組ではオポチュニティに対して「ご苦労様」というメッセージを送ったという話になっている)
いい話。
それにつけても何でこんないいニュースを伝えてくれないのだろう。
武田先生も水谷譲も(このニュースは)全然知らない。
伝えていたのかと思う水谷譲。
伝えて欲しい。
これはニュース。
最近でいうと「はやぶさ」とかは凄く伝わってきたのだが、オポチュニティは知らなかった水谷譲。
武田先生も知らなかった。
ニュースは作ってできるのだが、お願いだからニュースを作る人よければこういうこともニュースにしてください。
もう本当に関税ばっかりで飽きてしまった。
「知らなかったニュース」というので本当にもったいない。
学びのチャンスになるものは伝えて欲しい。

この物語「宙わたる教室」の中で(英語の木内)先生がこう英語で励ます

「Anyone who stops learning is old, whether at twenty or eighty」−中略−木内は笑顔でうなづく。「アメリカの自動車会社フォードの創業者、ヘンリー・フォードの言葉です。こう続きます。Anyone who keeps learning stays young」(129頁)

「学び続ける者は若さにとどまる」
本当にそう思う。

さて、藤竹は科学実験室に小さな火星を作り火星の出来事を再現しようと生徒達に呼びかける。
それは火星のクレーターを実験で作ることである。
まだこれは仮説らしいのだが。
火星のクレーターを自らの手で作ればそれは仮説ではなくなる。
興味深いのは物語はここから事実と並走する。
これは読み終わった後、教えてもらって驚いたのだが。
水谷譲にお話しした火星の実験があった。
夕日が青いとか。
これは実は本当の話。
本当に定時制の高校生達が科学部員で、火星の青い夕焼けから始まって、隕石が落ちる激突実験まで本当の定時制の高校生達がやっている。
(大阪府立大手前高等学校定時制の課程と大阪府立春日丘高等学校定時制の課程の「重力可変装置で火星表層の水の流れを解析する」)
そこは実話。

彼らの微小重力発生装置の東京大学の橘省吾さん−中略−が注目し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心とする「はやぶさ2」サンプラーチームが同様の装置で小惑星表面試料採取に向けた基礎実験に取り組みました。(284〜285頁)

 この小説は、久好さんら三人の先生方の熱い思いと、それに応えた生徒たちの奮闘に感銘を受けて書いたものです。(285頁)

武田先生が(この番組の中で)やっているのは先週も申し上げたが物理の実験のみ。
物語の方はもっと感動的なので是非読んでみてください。
実験室で火星を作る実験。
これが注目。
大気を通るのは長い波長の光だけになるような大気がある火星の空。
故に昼間の空は真っ赤、夕日は真っ青になるという火星の夕暮れ。
なぜそうなるのか?
それは大気に舞う塵が違うからで

「この実験、なんで火星の塵として酸化鉄の粉を使ってるんですか」
「実際に火星の表土に含まれている物質であって、かつ、簡単に手に入るからですね。火星の塵のサイズだといわれている、一マイクロメートル程度の粒子の試薬が」
−中略−
火星の表土を構成する、さまざまな鉱物の微粒子でできているはずです」
(114頁)

それをこの高校生達は一つ一つ再現していく。
彼らは火星の土づくりから始める。
火星の土は酸化第二鉄が多い。
とにかく地球とは違う知識が。
火星をどうしても再現したければ火星の大気とか気圧、そこまでも計算してアレしないと・・・
だから火星のいわゆる引力とか重力とかというのも火星に近づけないとできない。
これは大変。
その火星の地面の下には氷か水がある、と。
それが隕石の衝突した瞬間に高温が生じて溶けて湧出する。
一瞬にして土砂崩れのような大波を起こす為にフリル状の土砂が外輪を飾るという。
これはまた仮説。
果たしてそれが事実かどうか。
この小さなクレーターを作る実験と知恵が絞り出されていく。
だから、まさに少年ジャンプ的。
「友情」「努力」「勝利」
この手順でこの物語も進行する。

もうあきらめているが、ここからはラジオで語るのは非常に難しい、と。
武田先生には、読んでいてもその実験が文字で見えてこない。
なるほどテレビドラマ化するハズ。
これはもうテレビで見たら一瞬でわかるのだろう。
それでも文字で伝わってくるのは彼らの努力がどれほど凄まじかったか。
理解はしていないかも知れないが、感動したのは実はこの小説の中でここ。
重力の問題。
地球と火星では重力が違う。
火星では地球の0.38倍しか無いそうだ。
0.38倍の重力にする為には、夜間高校の実験室ではできない。
ところが実話の通り、高校生達がこれをやる。
重力を変えて火星での隕石衝突の再現。
これは相当大きい施設に頼まないとできるワケがない。
みんながそう諦めた時に、まあドラマでいうと見せ場。
藤竹先生が言う。
「いや、重力を変えることは可能ですよ」
前に何かのテレビのスペシャルで、飛行機で高くまで行って一気に失速すると重力を作るというのは見た水谷譲。
それに近い。

あなたたち自身は、いろんな重力をしょっちゅう体験しているはずですよ』って」−中略−
「『皆さんは、「ディズニーシー」に遊びに行ったことはありませんか?って。
−中略−
「『タワー・オブ・テラー』ですね」
−中略−
「そう、それ。真下に落っこちる乗り物なんだろ? 乗ったことなくても、ケーブルの切れたエレベーターを想像すりゃいい。自由落下する箱の中では、無重力になる」
(192頁)

 つまり、箱が落下する加速度を調節してやれば、原理的には好きな大きさの重力をその中に作り出すことができる。(195頁)

物理的には凄く簡単なことで箱の重さ、その反対側に箱の重さと同じ鉛を付ける。
そうすると手を放すと箱の方が落ちる。
それは重さが同じだから。
(同じ重さだと釣り合ってしまって落ちないのではないかと思う)
「その重さを変えることによって箱の落ちるスピードを変えることができますよ」という。
まず具体例でいう。
箱の落下速度を調節すればよい。
落下速度を変えればいい。
落下速度を変える為には反対側の重しで引っ張る力を強めにするとゆっくり落ちていく。
それを0.38倍になるところで止めればいい。
そうするとその重力が再現できるはず。
具体例でいきましょう。

天井に滑車を固定する。
井戸のつるべ。
その縄の端に重石を付け、反対の端に実験箱を取り付ける。
重石の調節によって0.38倍の重力の瞬間に鉄球を砂に落とす。
そうすれば火星のクレーター、その再現が箱の中で起きるはずだという。
箱の中だけが火星。
それをややゆっくり目の地上で落下する速度の三分の一になるように重石を反対側に付けて滑車を放す。
その時にその長さを計っておいて、その箱の上に鉄球を括り付け、そのスピードになった瞬間、ヒモがぎりぎりのところで結びつけられているので切れてしまう。
キレた瞬間に落ちる。
(本の内容とは異なる)
その数秒間の間に火星と同じ重力で鉄球が箱の下に敷いた土に激突する。
瞬間的。
しかしそれでも実験はできる。
火星と同じ重力が再現できる。

火星重力が維持できるわずか〇.六秒(211頁)

これを繰り返し繰り返し彼らは実験で割り出していく。
そしてついに火星と同じ0.6秒の瞬間を小さな箱の中に作る。
これを聞いていたJAXAもこのアイディアに負けたと思った。
それで引力の実験。
他の星でも重力の違うところはいっぱいある。
それを高校生のやり方でみんな真似をした。
それでその星で起こっていることを観測できる、実験できるようになったという。
このあたりはひどく感動したのを覚えている。

この物語を読みながら「人間の想像力というのは凄いものを生み出すことができるんだなぁ」。
「頭がいいとか悪いとかそういうことではない」「そこを超えている」と思う水谷譲。

ネタを使い切ってしまったか。
でも年を取ってくると全部のことが凄く気になるように・・・
武田先生はあの物理の教師、電車の振り子が揺れるのを見ながら地球の自転を証明しようと言ったあの物理の教師がよみがえった。
結局武田先生はその謎は解けたのかと思う水谷譲。
解けた。
物語を離れて一番最初にお話しした、あのつり革が揺れるのを見ながら地球が自転していることを証明しなさいという、あの高校三年の時の物理の授業に武田先生の思いは帰っていく。
一つの物理現象を目の前の実験でやりつつ、壮大な宇宙の理屈を割り出していくという。
それがフッと武田先生の個人史の中だが、高校生、生意気盛りの時に全く聞かなかった物理の時間に思いが戻って、あの時にその先生の話を聞いておけば一つは謎が解けたであろうに、先生の授業を聞かなかったというその無念がフッと思い出されて。
それが西鉄電車。
西鉄電車は関係ないが。
「つり革が揺れている」ということで「地球が自転している」ということを証明しなさいという。
武田先生は何を言っているのかわからなくて「つり革を見て地球が自転することがわかるわけないだろう」と思っていたのだが、実はあの物理の先生が教えたかったのはそこではない。
この物語の藤竹と同じで、つり革というのは「振り子」という意味合い。
とにかくつり革を作る。
それもつり革の短さだとすぐ止まってしまうからヒモを長くする。
それに数百キロの重石を付けて揺らす。
そうすると長いものだから揺れ続ける。
それをジーッと見ていると往復しない。
回る。
振り子がゆっくり回って行っているということかと思う水谷譲。
それが「フーコーの振り子」。
何で振り子は回るのか?
地面が動いているから。
(スタジオ内の電波が悪いのでドアを開けてYouTubeで「フーコーの振り子の動画を見る水谷譲)
(「フーコーの振り子」で検索するとたくさん動画が出てくるので、実際に番組で取り上げている動画がどれかは不明だが、一つだけ紹介しておく)



振り子を下げているその柱は、地面に直結している。
地面が振っている。
それがゆっくり違うところを往復するというのは地面の方が動いている。
この振り子の揺れによって地球がどの方向に自転しているのかもわかる。
今、見ているフーコーの振り子なのだが、少しずつずれている。
往復がゆっくり回転している。
「あの先生が言いたかったのはこれか」と。
なるほどそれで、地球が自転していることが証明できる。
もう少し詳しく言うと、自転の方向と逆回りだから日本で「フーコーの振り子」を揺らすと左に回る。
それで日本でいうと地球は右に回っているので、そうするとそういうことになる。
(多分逆)
たかだかこれしきの仕掛けでいろんなことがわかる。
さらに、頭が痛くなるかも知れないが、地球上のあるポイントではこれが全く動かない。
つまり「ずっと同じ方角に揺れ続ける」というポイントがある。
「赤道」だと思う水谷譲。
赤道は垂直に重りが引っ張られているので赤道上では往復を繰り返す。
そうやって考えると、あの先生が言いたかったのは小さな電車のつり革。
仕掛けはもちろんヒモの長さ等々違うのだが「それが揺れるというのも宇宙を貫いている物理なんですよ」という。
まだ映像がずっと続いているのだが、確かに振り子は普通にゆっくりゆっくり揺れているが、だんだんずれてきていると思う水谷譲。
これはもの凄く時間がかかる。
巨大な大地だから、球体だから、そう簡単に感じ取れるようなスピードではない。
映像を見たい人は「フーコーの振り子」で検索してください。
そうやって考えると物理法則、自転、公転、大気で何キロメートルにも達するような入道雲も小さなビーカーの中の味噌汁の煮え方でわかるとか、火星の重力でさえも実験室の中で再現できるとか。
面白いもの。
暮らしの中にはこのような物理法則がいくつも起こっている。
何か本当にそんなことをしみじみ思う。
それにしてもあの時、先生、もう今更ではあるが、授業をサボって申し訳ない。
ちゃんと先生に聞いておけばもうちょっとマシな・・・と思うのだが、あんまり贅沢を言わず、今、知ること、それでさえもやはり十分な知だというふうに思うので。

というワケで二週にわたって伊与原新さん、文藝春秋刊で「宙わたる教室」。
珍しく小説を。
物理実験のみを取り出して語ったという変わった回。
伊与原さんは「藍を継ぐ海」という短編集をお出しになって、これが直木賞に選ばれたという。
(第172回直木賞受賞作「藍を継ぐ海」)

藍を継ぐ海



伊予原さん、この人の考え方「自分達が生きているこの世界を貫く物理法則がある」「その物理法則というのが人間を豊かにしてるんだ」という。
物理と人間を結びつけたというのが武田先生は面白くてならない。
この人の直木賞受賞作品が何篇も好きなヤツがあったのだが、武田先生は「長崎の原爆資料を集めている」というのが好きだった。
(広島平和記念資料館の初代館長で地質学者の長岡省吾氏の活動に着想を得た「祈りの破片」)
長崎に原子爆弾が落とされた。
長崎のあちこちから遺品を集めたという人がいる。
焼けただれた茶碗とかそういうものを。
本当にいたらしい。
その人の廃屋があって、そこをガラクタだってみんな思っていて、よく調べたら原爆資料だったという。
科学で明かす為の証拠品として集め続けたという。
これも壮大な物語だった。
(「藍を継ぐ海」)
「藍」とは何か?
これは「海」。
「海を受け継ぐもの」というタイトルで四国のとある町にやってきたウミガメ(アカウミガメ)。
そのウミガメが付けていたタグがある。
そのタグを持って、異国のアメリカ人がその浜辺までやってくるという。
ウミガメの太平洋の旅は聞くと凄い。
そんなことを考えたこともない。
(ウミガメにタグをつけたのは)ウミガメの研究者の人。
それでもう本当にその時に伊予原さんが「痛いとこつくなぁ」と思うのだが、ウミガメのことを考えて村人は凄くウミガメを歓迎して、浜辺まで歩いてヨチヨチ歩きで行く最中に事故に遭ったりカラスに喰われたりしないように、かつて村人たちが卵を掘り起こして別の砂に移して大事に温めて子亀になるのを待って子亀を海に返したそうだ。
人間として優しい。
人間が手を加えることによって、助けたウミガメを全滅させている。
そのことが最近の研究でわかったという。
ウミガメが卵から孵る。
そうすると子亀の全身に「海に急げ」というホルモンが出る。
それは何日間かしか出ないもので、日にちが過ぎてしまうとそれは出なくなってしまう。
出なくなったのを確認して海に返してしまうと、ウミガメ自身が本能のパワーを無くしてしまう。
「優しさって何だろう」と思う水谷譲。
生き物を扱うということがいかに難しいか。
武田先生はこのへんを本当に思う。
生き物が生き物に対する思いというのはわからないでもないが。
タグをくっつけてそのウミガメを返す。
そのタグの成分がウミガメにマイナスだった。
とにかく人間が手を出すことによって、かえってその生物を絶滅に追い込んでいるという。
東日本大震災の時もそうだったが数か月でアメリカ北米に届く。
あの航路と同じ航路を辿ってウミガメは旅していって。
それでただ一点の自分の生まれた古里の浜辺を思い出して上ってくる。
あいつらも数十年かかるそうで。
ちょっと記憶が間違いないと思うが、確率から言えば千個の卵のうち、交尾できるウミガメに育つのは二匹。
だからやはり冷酷かも知れないが「その法則に従わなければダメなんですよ」という。
伊予原さんがそうおっしゃる。
その言葉に凄い説得力がある。
「人間が下手に手を加えてはいけないんだな」と思う水谷譲。
暮らしの中には小さな事象、いろんな森羅万象がある。
「リンゴが木から落ちる」とか「走る電車のつり革が揺れている」とか「空が青い」とか「夕焼けが赤」いとか。
実はその裏側には広大な宇宙の物理が働いている。
武田先生がもっとも感動したと言ってもいいと思うが、巻貝というのはある。
あの巻貝の巻く方角。
銀河の巻き方と同じ。
あれの通りに貝は巻くそうだ。
そんなふうにして考えると「私達の中にとても大きな宇宙がある」ということ。

武田先生は、古里の高校の先生ではあるが、こんな話を覚えている。
「私達は星の欠片でできているのです」



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