前にご紹介した「発達障害 工夫しだい支援しだい」という本に先行して書かれた本。
本来はこっちを先に読むべきだったワケだけれども。
で、前と同じ著者なので、かなり共感できる部分も多い本ではあるが、何か所かちょっとこれは・・・っていうところもあった。
今回も「自分もそうだな」っていうものと、「全然自分には当てはまらない」というものがあった。
それだけ「アスペルガー症候群」といっても内容はバラバラってことで。
この本の著者は単に発達障害があるってだけではなく、発達障害に起因するものかも知れないが特別な才能があるということで。
まあ、特別な才能がないとか、そもそもの能力が全てにおいて低いっていう発達障害者は珍しくないっていうか、それが普通だと思うんだけどな。
この本の著者は自分に特別な才能があるので、他の人もみんなそう!ぐらいのスタンス。
才能がない私達には参考にはなりません。
この人はその才能を生かしてなんだろうけれども、まともな仕事に就いて、自立して生活しているということで。
まあ、そんなの自分の努力とか工夫とかでみんなができるってことではないよな。
「はじめに」のところに、著者が診断を受けてからどういう精神状態だったかなどについて書かれている。
私も同じようなルートを辿ったのでよく理解できるが、診断を受けてすぐはそれまで信じていたことが劇的に覆される体験をするので、精神的に激しく揺さぶられる。
でも、大人の発達障害に対しては就労支援ぐらいしか支援はなく、精神的にぐちゃぐちゃになってもそれに対するサポートはない。
私は著者と違って今でも精神的にいい状態にはないけれども、やっぱり診断を受けてしばらくは精神的なケアは欲しいよなと思うのだけれども。
このあたり、すごく精神的にきつい時期があるってのは、もっと認識されていいと思うが。
そういえばテレビなんかで発達障害のことを扱っても「診断を受けてほっとしました」しか登場しなくて、その後に来る精神的にきつい時期ってのは全然取り上げられることがないな。
感覚過敏は、生かせば「才能」となりうるのです。
聴覚過敏なら音楽家・調律師・楽器の政策、嗅覚過敏なら香料の研究や脱臭剤の研究、味覚過敏なら調理師・食品開発、触覚過敏なら衣料品の研究開発や服飾関係……。(23頁)
こういう話はテレビなんかを見ていてもよく出てくるし、たまに本なんかでも見かけるので一般的な認識ってことなんだろうけれども、「過敏」と「敏感」は違うのだ。
私は多分嗅覚過敏で、多数派が好む臭いの大部分が悪臭だけれども、それは「苦手な臭いが多い」ってだけで、別段嗅覚が優れているワケではないのだ。
臭いをかぎ分けられるワケでもなければ、わずかなな臭いに気づけるワケでもない。
この著者の場合、わずかな色の違いも見分けられるようだが、それは視覚過敏とは関係ないっていうか、視覚過敏だったらそうってことではないのだ。
発達障害とは関係が無い話なので詳しく書かないけれども、女の人の場合、生まれつき色を見分ける能力が極端に優れている人がいる。
そういう人たちは色を見分ける能力が優れているが視覚過敏ではない。
こういう変な認識が蔓延しているせいで、発達障害者自身がどう考えてもデメリットしかないだろ?っていう特性に対して「私ったら凄い!」みたいな認識を持っているのを見かけるが、それって才能ではないのだけれども。
今、自分の周りには、支援者がいない…そう感じている人は、あきらめないでください。−中略−
ですから、まずは視野を広げて「理解者」を確保してください。発達障害があっても、前に進むことはできます。考え方が変われば、おのずと理解者が増えてきます。(95頁)
・・・。
何をどないせいっちゅうんじゃ?
視野を広げるって何しろって?
どう考え方を変えろって?
アスペルガー症候群の診断を受けたときに、医師から、
「あなたには特別な才能があって、自分に合った支援で才能を発揮できれば、幸せになれる」
と言われました。(113頁)
まあ、そういうことだねぇ。
私はそんなこと言われなかったもの。
発達障害のある人は、「ちょっと取り扱いが難しいけど、使いこなすとすごく役に立つ」そういう人材なのです。(118頁)
そうでもないですよ。
結構絶望的にいろんな意味でダメな人って多いですよ。
っていうかそんなヤツばっかりじゃボケぇ!
著者があまりにも特別な才能があって、うまいこと社会に適応できちゃっているので、途中のつらくて苦しい診断前の状態みたいな話には、かなり共感できる部分もあるけれども、それ以外は発達障害について知りたくて読んだ人にむしろ誤解を与えかねない部分も多いので、正直オススメできないな。
扱いに困る発達障害者が身近にいて、この本を読んで「この人もいろいろ理解してあげたらもの凄い才能を発揮して!」ぐらいの変な期待をしちゃう可能性大だな。
安心してください。
たいして才能もないし、発達障害ってだけじゃなく(まあ障害特性上、子供の頃から叩かれまくったことも原因だろうけど)救いのないような根性の悪い、むしろとっとと切り捨てた方がいいような人が大量にいるので、この本の著者のような才能があって優秀な発達障害者を夢見ないようにお願いする。
今まで、発達障害関連の本は結構読んできたけれども、本の内容で救われることもないし、まあ共感できる内容を含んでいる本もたまにあったけれども、かといってそれを読んで安心したとか不安が軽減したとかもなく。
時間の無駄だったかなという気がする。
この本の内容とは関係ないけれども、とにかく大人の発達障害者(とくに大人になってから診断を受けた人)には精神的なケアが受けられるようなシステムづくりをお願いしたい。
そのへんのクソみたいなカウンセラーにかかっても、逆に悪化させられるだけだからな。